2025年09月12日 1886号

【みるよむ(742)2025年8月9日配信:人間が飲める水を要求する―バスラ州民の声】

 イラク南部バスラ州のアル・ミタイナ地区で、飲料水の供給が停止した。住民は人間が安心して飲める水を求めて行政当局を追及している。2025年5月、サナテレビが報道した。

 バスラ州は、ティグリス・ユーフラテス川の下流域にあり、水資源は豊富だ。しかし、この地区のように、多くの地域でまともな飲料水が届けられない深刻な問題が発生している。

 イラクでは、夏には気温が50度を突破する。そのような中で、飲料水の供給が停止するのだ。しかも、たとえ飲料水が送られてきても、「自宅に届く水は汚染されていて、塩分を含んでいる」という状態だ。川の水位の大幅低下に対応できず、ポンプ場や浄化施設がまともに動いていないのだ。

 バスラでは水道インフラの整備が著しく遅れ、淡水化も民間企業に頼っている。ついに、淡水化施設が故障や燃料不足で稼働を停止してしまった。「飲料水の供給が完全に途絶える」という事態を招いたのだ。

デモや道路封鎖で要求

 人の命に関わる飲料水供給の停止になすすべもない無責任な行政当局。住民はそんな状況を放置していない。数百人の住民がデモを行い、住宅街から政府機関、自治体当局、水道、電力の各社屋へと行進した。幹線道路を封鎖して抗議し、「人間が安心して飲める水の即時供給」を要求した。

 バスラでは近年、水や電力の供給停止、雇用機会、医療サービスの欠如などの問題が次々と発生し、多くの抗議デモが起きている。飲料水を要求する今回のデモも、住民のこうした闘いの一つだ。

 バスラ行政当局も「州知事の指示のもと迅速な対応を命じた」と口にはする。だが住民は、中央と地方の行政当局の取り組みに甘い期待は持っていない。自らの命と生活を守るために立ち上がっている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS