2025年09月19日 1887号【関東大震災ジェノサイド102年／排外主義を許さず歴史に向き合う】 |
日本政府は責任を認め、謝罪せよ／朝鮮人・中国人犠牲者追悼大会８月31日、東京・千代田区の明治大学リバティタワーで行われた「関東大震災朝鮮人・中国人虐殺１０２年犠牲者追悼大会」では、韓国・中国から出席した被害者遺族があいさつした。韓国・慶尚南道（キョンサンナムド）の曺光煥（チョグァンファン）さん。関東大震災の当時33歳だった祖父の兄が生を絶たれた。九死に一生を得た同じ村の後輩が知らせてくれたという。墓に遺体はなく、生前身に着けていた服や靴などが置かれているだけだ。「遺骨を探し出し、きちんと埋葬することが私たち子孫の道義。だが、探せない。日本は震災を政策的に利用し、『朝鮮人が井戸に毒を投げた』『民家に火をつけた』といった流言飛語をばらまいた。今に至るも日本政府には何の反省もない。被害者が逆に加害者のように扱われている」 中国・浙江（せっこう）省の周松権（チョウソンチュアン）さん。同じ村から日本に働きに来ていた祖父ら20人以上が２人を除き殺害された。「１０２年前の惨劇は、天災に伴う偶発的な出来事ではない。計画的組織的な大虐殺だ。日本軍国主義の卑劣な暴力は今なお私たちを苦しめている。２０１３年以来この虐殺の地を何度も訪れ、日本政府に要求書を提出したが、いまだに何も対応しない。日本政府による歴史の事実の隠蔽、改ざんを許すことはできない」 中国・福建省の陳興斧（チェンシンフー）さん。虐殺された同省福清市出身の労働者らの遺族聯誼（れんぎ）会を代表して初来日した。「日本人女性と結婚し、一男一女を授かって幸せに暮らせたはずの伯父・陳善慶（チェンシャンチン）は、横浜・鶴見で暴徒に四肢の関節を逆折りされた。妻に助け出され、福建に戻ったが重い障がいのため仕事に就けず、幼い娘を他人に預けるなど悲惨な生活を強いられた。周りから『ねえさん』と呼ばれた日本人の妻の名前は、今も分からない。この歴史を決して忘れてはならない。日本政府は歴史の事実を認め、国家責任を果たし、謝罪と賠償を行うべきだ」  虐殺見ずに今の差別見抜けない／横浜市横浜市営久保山墓地で９月６日、「関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会」の主催で追悼会が開かれた。久保山墓地には、少年時代に虐殺の現場を目撃した石橋大司さん（故人）が「日本人として決して忘れてはならぬ歴史的事実を残したい」との思いで、１９７４年に建立した碑がある。神奈川朝鮮中高級学校中級部の生徒は「石橋さんのような方がいる反面、百年たった今でも虐殺の事実を認めず謝罪をしない日本政府に憤りを感じる」「日本の学校の教科書には『朝鮮人や中国人の方々が犠牲になった』と虐殺という表記がない」と、〝なかったこと〟にしようとする日本政府に苦言を呈した。 山本すみ子代表は「外国人が増えると治安が乱れる、外国人のせいで賃金が上がらないなどのデマに賛同する人が多い。大震災時の『朝鮮人なら殺してもかまない』といった〝口上（こうじょう）〟が流布された状況と今は似てきている」。 福島みずほ社民党党首も「ヘイトクライムの次はジェノサイド、そして戦争になる」と排外主義がはびこる現状に警鐘を鳴らす。 ３３０人が献花し手を合わせた。実行委員会メンバーが、２０２３年に見つかった新資料を元に虐殺の状況を詳細に報告。在日３世の舞踊家・曺和仙（チョファソン）さんは、追悼舞を犠牲者に捧げる。 横浜市に対し、市長からの追悼文送付、虐殺の事実と向き合うことなどを求めたが、受け入れていない。山本さんは強調する。「虐殺を見ずして現在の差別を見抜くことができるのか」  地域から朝鮮人犠牲者を追悼／千葉・市川市８月30日、猛暑の中、市川市若宮の北方（ぼっけ）十字路で２回目の市川追悼式を開催しました。今年は市内の有志が集まり、実行委員会を立ち上げての実施で、30名を超える参加者でした。市川市では南行徳今井橋付近、新田、北方十字路付近で計25名の朝鮮人が虐殺されています。北方十字路の犠牲者は、９月３日の船橋での事件を聞き、市川警察署に向かう途中に自警団に襲われたのです。犠牲になった方々は、北総鉄道の工事に携わっていた朝鮮人労働者。前日まで地域で一緒に暮らしていました。 参加者からのアピールでは、「参院選、在日の方は『怖くて早く終わってほしいと思っていた』と話していた」「高校無償化から朝鮮学校の子どもたちは除外されたままです」「入管法の改正、５月の不法滞在者ゼロプランは排外主義をさらに進めている」と発言がありました。最後に市川市議から「６月市議会の一般質問で、１０２年前市内で虐殺があったこと、現在のヘイトスピーチについて質問し、市川市より回答があった」と報告され、「史実をきちんと伝えていくために来年も開催したい」と決意が語られました。 （全交ちば 山口真理子） |