2025年09月26日 1888号

【カタール空爆「停戦協議」潰し図るイスラエル/国連決議履行求める大行動へ】

 イスラエル軍は9月9日、カタールのハマス事務所を空爆した。ネタニヤフは停戦交渉の相手方代表団を吹き飛ばし、停戦協議そのものを潰そうとした。イスラエルは「ガザ制圧」作戦だけでなく、カタール空爆に対する抗議を全世界から浴び、孤立を深めている。日本政府にも、パレスチナ国家承認、空爆非難だけでなく、イスラエルとの経済連携などの破棄を表明させよう。

米国政府も共謀

 イスラエル空軍の戦闘機がカタールの首都ドーハ市街地にあったハマス事務所にミサイルを撃ち込んだ。2011年以来、米政府の要請に応じカタールがハマスに提供した事務所。停戦協議を検討する代表団がいるとの情報をもとにした。

 ドーハ郊外には中東最大の米軍基地がある。空爆地から約30`bのところだ。米軍は事前に連絡を受けていた。トランプ大統領はとぼけているが、空爆を了承したと見てよい。



 ネタニヤフ政権がカタール空爆に踏み切った理由は、ハマスが停戦に応じる姿勢を見せたからだ。停戦条件は、最初にハマスが人質全員を解放し、その後イスラエル軍の撤退範囲などを具体的に詰めるというもの。ハマスが拒否することを想定したトランプ政権の最終提案だった。米政府も停戦を望んでいなかったということだ。

 ネタニヤフ政権は、ハマスを排除せず停戦すれば政権を離脱すると宣言する極右政党との連立政権。ハマスが停戦を受け入れると、ネタニヤフ政権は崩壊し総選挙を実施することになる。ネタニヤフが選挙に勝つ見込みがない。「停戦」は自らの政治生命の終わりを意味すると考えているのだ。

孤立するネタニヤフ

 「空爆」を非難する国連安保理声明が2日後の9月11日に出された。イスラエルの名指しは避けたとはいえ、米国も拒否できなかった。「非難」は覚悟の上とはいえ、ネタニヤフは露骨な「停戦潰し」に出なければならないほど追いつめられていた。

 9月13日には、国連総会でサウジアラビアとフランスが提出した「パレスチナ問題の平和的解決と二国家解決策の実施に関するニューヨーク宣言」が日本を含む142か国の賛成(反対は米国、イスラエルなど10か国、棄権12か国)で採択された。22日には、パレスチナ問題解決に向けた国際会議が開催され、英、仏、独など主要国がパレスチナの国家承認を表明する。日本政府も態度表明する。

 「二国家解決」は、1947年国連総会での「パレスチナ分割」決議が出発点になっている。以後続く、イスラエルの軍事侵略・占領、アパルトヘイト体制が今日のパレスチナ問題の根源である。パレスチナ国家承認が問題解決につながるには、イスラエルを国連決議に従わせる以外にない。 パレスチナ現地で闘うPPSF(パレスチナ人民闘争戦線)マジュダラニ委員長もこの決議を歓迎し「現実の場で実現するには実際的・実践的措置が必要だ」と表明している。

 この点で、2年前は明確にイスラエル擁護だった欧州主要国が公然とイスラエル批判をせざるを得なくなったのは、大きな変化だ。

 マクロン仏大統領は「イスラエルは戦争犯罪を通じて世界的な反ユダヤ主義を煽っている」と述べた。EUフォンデアライエン委員長は「(ガザ戦争は)世界の良心を揺るがしている」と非難し、イスラエルとの貿易関連協定の見直しを提案する意向を示した。

 スペイン国防省は、イスラエル軍事企業ラファエルからのミサイル購入契約など2億ユーロ(約350億円)を超える契約をキャンセルした。トルコはイスラエル政府専用機及び軍の武器輸送機の領空通過を禁止し、港湾利用も認めないと表明した(8/29)。

全世界で「共謀やめろ」

 各国政府を突き動かしているのは市民の闘いだ。9月7日、ベルギーの首都ブリュッセルでは12万人のデモが行われた。人口120万人超。その1割がパレスチナ支持の行動に参加したことになる。27歳の学生は「すべての学生やあらゆる世代の人びとがこの都市で抗議することが本当に重要だと思う」と述べている(9/8AFP)。ブリュッセルにはEUとNATO(北大西洋条約機構)の本部があるからだ。

 ベルギーのプレボ外相は「EUが甚大な人道危機に責任を果たしていない」と述べ、EUの外交政策への信頼は崩壊しつつあると語っている。ベルギーは、イスラエルに対する新たな制裁を科すと表明している。

 パレスチナBDS(ボイコット・投資引き揚げ・制裁)全国委員会(BNC)は9月18日から21日にかけて週末グローバルアクションを呼びかけている。9月18日は、昨年の国連総会で決議した「1年以内にパレスチナの違法占領とアパルトヘイトを終わらせること」をイスラエルに通告した期限だ。ところがこの1年間は、イスラエルの違法行為が激しさを増した期間になってしまった。イスラエルと共謀する国家、企業、機関がそれを支えているからだ。

 BNCは共謀阻止を主要な目的に掲げ、各国政府に武器禁輸措置、武器取引の停止や、占領・アパルトヘイト体制を支える可能性のある経済、貿易、学術関係の解消などを求める行動を呼びかけている。

 国連はかつて、アパルトヘイト国家南アフリカ共和国の総会参加を認めなかった(74〜94年)。武器禁輸措置やスポーツ交流ボイコットなどの制裁を決議した。64年、東京オリンピックに参加させなかった。国際的なボイコット・制裁により、90年にはいくつかのアパルトヘイト法が撤廃され、94年全人種選挙により誕生した新政権により廃止された。

 南アのアパルトヘイト体制はイスラエル建国(48年)と同時期に始まった。イスラエルのアパルトヘイトは今も続いているのだ。

 トルコはイスラエルの国連からの締め出しを提案するつもりだ(8/25MIDDLE EAST EYE)。BNCは南アに対した時と同じような合法的制裁を求めている。

 ネタニヤフが9月26日、国連総会で演説する。ニュ―ヨークでは総会会場に向け、「ネタニヤフを逮捕せよ。ジェノサイドをやめろ、イスラエルに制裁を」大行動が呼びかけられている。イスラエルと共謀するのかどうか、各国政府の姿勢が問われている。

   *  *  *

 日本は国連総会に退陣を表明した石破首相が出席する予定だ。国連設立80年にかけて、日本の戦後80年談話を述べるともいわれている。日本の植民地主義を反省するとともに、イスラエルの植民地主義に対する批判を行うことだ。それであれば参加する意味はある。

 ネタニヤフはカタール空爆と同じ日、ガザ市の住民100万人に退避命令を出した。PPSFはガザ、西岸で抗議行動を組織している。パレスチナを孤立させず、ともに闘おう。



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