2025年09月26日 1888号

【だまってへんで/伍賀偕子と仲間の歩んだ道/伍賀さんと仲間の歩みを聞く会編 MDS新聞社 1400円+税/一人ではなく ともに闘う生き方をつくる】

仲間といっしょに創った

 現代政治研究会(MDSの前身)と働く青年の全国交歓会(全交、現在のZENKO)の出発や、大阪の労働運動、女性運動に深くかかわってきた伍賀偕子(ごかともこ)さん。その長年にわたるたたかいを次世代に引き継ぐ本をつくろうと、私も編集に携わってきました。

 そのためにまず、昨年の秋から「伍賀さんと仲間の歩みを聞く会」を3回持ちました。この会には毎回、運動をともにしてきた仲間や、以前の活動を経験していない人も集まり、伍賀さんの話に耳を傾けました。また質問もたくさん出されて、それが本の内容を深めることになりました。

 例えば、「70年の大阪万博でストライキをやったということをもっと詳しく教えてほしい」との質問に、伍賀さんは「万博で働く女性たちに『ひどい労働条件に声を上げてええのよ』と言ってきた」と、当時のたたかいを生き生きと語ってくれました。

 こうした聞く会のデータを文字起こしし、編集委員で文章化したのがこの本です。伍賀さんのたたかい同様、この本も多くの仲間の協力ででき上がりました。

若い人たちに伝えたい

 伍賀さんは「あとがき」の中で「一番意識したことは、自分ひとりで挑んだのではなく、いつも仲間と一緒に歩んだ道だと共有することでした」と書かれています。その道は決して平坦な道ではなかったはずです。しかし、数少ない女性の活動家として、常に先頭に立って、仲間を導き、励ましながら歩んできた道だったのではないでしょうか。

 この本は、多くの若い人たちにぜひ読んでもらいと思っています。社会変革へのたたかいの先輩の人たちが、活動を通して何を考え、何をめざしてきたかをつかんでほしいと思います。

 多くの若い人は、生きづらさを感じ、孤立感を深め社会に対して不信感を抱いています。「民主主義的社会主義」を学び、仲間と連帯してたたかうことで、社会を変革し、自らをも解放できることが、伍賀さんのたたかいの中にたくさん出てきます。

 「不当なことには黙ってないで声を上げる」、たとえ一人争議でも「敵は資本」となかまとともに徹底的に闘い抜いた小川闘争。そこからタイトル『だまってへんで』が生まれました。

女性の自立と職場闘争

 私が伍賀さんと一緒に運動することになったのは、女性として自立して働き続けたいと思っていたからです。女性が結婚、出産、子育てをしながら働き続けることは、以前も今もとても大変なことです。

 その中で、「職場に婦人(女性)の砦を」と訴えて、組合婦人部をつくり、仲間とともに職場を変えていく運動を広げようとしたのが伍賀さんでした。1970年代の後半には「婦人活動者会議合宿」を持ち、学習とたたかいの交流を行ったことは、画期的でした。私自身も何度も参加し、元気づけられた経験があります。

 その中で、強調されたのが、恋愛、結婚、出産、子育ては個人的な問題ではなく「闘う生き方を作ること」、そのために悩みを出し合い、みんなで解決していこうという姿勢でした。

子全、OPENの立ち上げ

 その延長として生まれたのが子ども全国交歓会(子全)で、「共同の子育て」「民主的感性を持つ子どもを育てる」を合言葉に、私もかかわってきました。

 もう一つは、OPEN(平和と平等を拓く女たちの絆)です。イラクや韓国の女性たちともつながり、女性の国際連帯や国際的な視点での運動を目指して現在も取り組んでいます。

 このように、私自身もこの本を読みなおしながら、伍賀さんに数多く学び、背中を押され、活動を支えられていたことを改めて思い起こしています。

 こうした思いを若い世代の人たちとも共有していきたいと思っています。ぜひ読書会、感想交流会をしましょう。『だまってへんで』を、たたかいの「道しるべ」として活用していただきたいと願っています。(OPEN代表・山本よし子)

《伍賀偕子》

 1966年大阪市大卒業後、MDSの前身である現代政治研究会の設立(1970年)、第1回「働く青年の全国交歓会」スタート(1971年等)に携わるとともに、1966年大阪総評に就職以来、大阪の労働運動・女性運動を担う。著書『次代を拓く女たちの運動史』『女・オルグ記』など。
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