2025年09月26日 1888号
【コラム 原発のない地球へ(27)/いま時代を変える/DC(データセンター)のために原発活用なんてとんでもない】
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人工知能(AI)の急速な普及などを背景に、大規模な情報処理を行うデータセンター(DC)の建設計画が各地で具体化している。そうした中、東京電力グループの送配電会社「東京電力パワーグリッド」は、「東電管内において申し込まれた2037年度までのDC向け電力容量は、実に約950万キロワットに達しています」と発表し、将来的に電力需要が爆発的に高まるとして危機感をあおっている。
原子力ムラは、AIやDCによる電力需要増を口実に「原発の最大限活用」を進めていこうと決めたようだ。950万キロワットといえば平均的な原発9基分の年間発電量に相当する。その方針を背景に、東電は新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働を推し進め、関西電力は美浜原発敷地内に次世代原子炉を建設する方針を発表した。
だが、先の950万キロワットという数字はあくまで電力容量(安全に流すことができる電力の最大量)であって、実際にそれだけの電力需要が発生するかどうかは別問題だ。企業がそれぞれのコンピューターで管理していたデータをDCに集約すれば、企業側の電力消費は減る。また橘川武郎・国際大学学長は「NTTが開発中のIOWN(アイオン)という技術が実用化されれば、DCの電力需要も劇的に減るとされる」と語っている(9/1毎日)。いまは今後の需要増を見込んでのDC建設ラッシュという状況だが、そうした省エネ技術の開発が進めば、容量目一杯の利用があるかどうかはわからない。
国立情報学研究所の佐藤一郎教授は「実際に事業者へ配電する量は(約950万キロワットの)10分の1もないのではないか」(7/7東京新聞)と東電の過大な説明を批判している。DCの電力需要を口実に原発活用などとんでもない話だ。しかも、個々のDC建設は立地自治体に電力需要増をはじめ様々な問題を引き起こす。
東京都日野市でも日野自動車の工場跡地にDC3棟の建設計画がある。住宅地に近い場所にタワーマンション級の高さ72bの巨大な建物が建つことになる。DC建設に反対する市民団体の試算によると、年間の電力消費量が市全体の3倍、CO2排出量や排熱量がともに市全体の2倍に上るという。
DCは大量のデータを保管しており休みなく機械を動かし続けなければならないとされ、そのため多くの電力を使い高熱が発生する。それを冷却しなければならない。大量の熱と蒸気が出続けるので、周囲の気温が2〜3度上昇すると言われる。また火災が起きた際の有毒ガスの発生や日照、低周波の懸念もある。いま各地で住民の反対運動が起こり、まちづくりの観点から行政側も問題にしはじめた。千葉県印西(いんざい)市では市議会が駅周辺へのDC建設は「不適切」とする決議をあげる事態となっている。何らかの法的規制が必要だろう。 (U)
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