2025年09月26日 1888号

【今の戦争と戦争準備を止めるため/2つの戦争を語り継ぐ会/80年前の記憶を継いで動く/兵庫県西宮市】

 80年前の8月6日、広島原爆投下の数時間前に阪神大空襲があった。西宮の市街地が焼け野原になり、600人以上が亡くなった。

 今年8月6日に西宮では、「戦争を語り継ぐ会」が午前と午後、2か所で開催された。2011年から続く「浜脇古老の会」主催のものと、2回目の開催となる「鳴尾村誌を読み、戦争を語り継ぐ会」主催のもので、両会場とも満杯となった。

 昨年1月、「平和と福祉のまち西宮をつくる会」は、「西宮・鳴尾の戦跡を残そう 戦争写真パネル展」に取り組んだ。

 鳴尾地域の暗渠化工事による「爆弾痕が残る橋」(戦跡)の撤去計画で、「戦争の生き証人」が消されることは戦争がなかったことになる。何としても止めたい、との思いからだ。

 2023年の浜脇の「語り継ぐ会」との出会いから、「西宮空襲写真パネル」をお借りして開催した。3月には「戦跡フィールドワーク」で、橋の保存に声を上げていた地域の方と新たに出会い、戦争体験を聞き取り記録する活動を開始した。

 『西宮市上鳴尾 三姉妹の戦争の記憶〜子どものころ戦争があった〜』の小冊子にし、昨年8月の「語り継ぐ戦争」で発表した。

 その後1500冊以上が読まれ、戦争体験が「ふたをしていたものが外れたようだ」と続々と寄せられ、聞き取りも行った。『戦後80年…戦争の記憶』にまとめ、今年の「語り継ぐ会」で発表した。

 鳴尾の「語り継ぐ会」では、地元高校の放送部制作のドキュメント『継(西宮の戦争体験を語り継ぐ)』を上映。出会いは、昨年12月の朝日新聞記事「残したい『あの橋』が語る空襲 暮らしの中にある戦跡『平和学ぶ教材』」を放送部員が読んだことからだ。

 年明けに取材を受け、放送部員は今年4月の「―西宮大空襲80年―沖縄・ガザ・平和写真パネル展」の準備にも参加してくれた。

 遺族・戦争体験者・保存活動の取り組みを半年間かけて取材、制作。作品はNHK放送コンテスト「テレビドキュメント部門」で全国大会に出場し入選した。

 「戦争体験を語る人が高齢化していく今、二度と戦争を起こさないという思いをどう継いでいけばいいのか。きっといろんな伝え方でいい。過去の戦争の記憶を受けて、一人一人が自分なりの方法で動き出す。それが戦争を知らない私たちのドキュメントです」と、高校生たちの成長していく姿が映し出された。高齢の参加者からは「私たちの希望だ」と感想が寄せられた。

 毎年8月の「語り継ぐ会」は“戦後世代の私たちへの問いかけ”となっている。今起こっている戦争と、戦争準備の状況に「NO」と声を上げていきたい。

(平和と福祉のまち西宮をつくる会・吉ア恵美子)

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