2025年10月03日 1889号
【戦争法10年 タガが外れた自衛隊/戦争挑発の軍事演習をやめろ】
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集団的自衛権行使を容認する「平和安全法制整備法」「国際平和支援法」(戦争法)が強行採決され、成立してから10年(9/19)。その影響はどう現れているのか。自衛隊は「他国防衛」のために敵基地攻撃ができる兵器を実戦配備するところまできた。軍事演習が同盟国(米国)だけでなく、「準同盟国」「同志国」へと拡がり、戦闘が当たり前のような日常を作り出している。戦争法廃止、軍事演習やめろ、軍事費削れと声を上げ続けよう。
日米ミサイル連携
沖縄・南西諸島を戦場とする日米合同軍事演習「レゾリュートドラゴン25」が行われた(9/11〜25)。目的は「島しょ防衛」。実態は米海兵隊「遠征前進基地作戦」(EABO)に基づき、在沖海兵沿岸連隊と陸上自衛隊西部方面隊を中心に中国を敵国とする実動訓練を行うものだ。毎年行われる演習は今年で5回目。昨年の2倍1万9千人(米軍5千人、自衛隊1万4千人)が動員され、九州・沖縄を中心に8道県に及ぶ。
今回は、日米両軍のミサイルシステムの共同運用を主眼に置いている。米海兵隊は石垣島に最新兵器の地対艦ミサイル「ネメシス」と防空システム「マディス」を展開。陸自「12式地対艦ミサイル」との連動を試す。
海兵隊のネメシスは射程200`b程度の短距離だが、無人車両を用い、中国軍の攻撃圏内で交戦する「スタンドイン部隊」の任務をこなす。陸自は有人であり、同じ「スタンドイン部隊」として使い捨てられるのである。
さらに海兵隊は岩国基地に中距離巡航ミサイル・トマホークの発射システム「タイフォン」を初めて配備する。トマホークの射程距離は1600`bとされ北京に届く。トレーラーで牽引するコンテナに発射台を搭載。宇宙やサイバー空間、電磁波領域の作戦にも対応できる機能を備えているという。
陸自は沖縄・勝連分屯地のミサイル部隊が長射程に改良した12式地対艦ミサイルの展開訓練と電子戦システムを試す電磁波照射訓練をする。防衛省は住民生活への支障はないと言うが、そもそも全島でミサイルが飛び交う戦闘を想定すること自体、問題なのだ。


無理な参戦シナリオ
政府は「台湾有事は日本の有事」とし、戦闘行為が当然であるかのように繰り返してきた。実際、戦争法上、どんな判断で参戦するのか。
こんなシナリオがある―中国軍は台湾侵攻とともに、米軍佐世保基地などを攻撃。日本政府は、日本に対する「組織的、計画的武力攻撃」(武力攻撃事態)とはいえず個別的自衛権行使は見送るが、「存立危機事態」として集団的自衛権に基づく武力行使を可能と判断。これを受け、米軍は台湾海峡を航行する中国艦船への攻撃を要請。航空自衛隊戦闘機が中国軍輸送艦を攻撃―。 このシナリオは、日米の陸海空など全軍種が参加する最大規模の軍事演習「キーンソード」と交互に行われている図上演習「キーンエッジ」が24年2月に想定したものだ(4/6産経)。シナリオがあえて在日米軍基地への攻撃に限定したのは、集団的自衛権を行使する場合の状況判断、参戦手順を検証したかったからだ。
レゾリュートドラゴン25の中でも、「機密指揮所演習」(9/11〜17日)が行われた。日米の「指揮統制機能の統合」が目的とされている。いつ、だれが敵基地攻撃ミサイルの発射命令を出すのか確認しているはずだ。
仮に「中台の武力衝突」があったとしても、「国民の生命・自由・幸福追求権が根底から覆される」存立危機事態にならない限り、戦争法の規定上、武力行使をすることはできない。まして、在日米軍を守るために敵基地を攻撃することなどありえない。軍隊が勝手に判断することなどあってはならない
自衛隊機が欧州へ
中谷元・防衛相は今年になって、中国と連動し朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)・ロシアが武力行使に出る可能性があるとして、中国を取り囲む東シナ海から南シナ海を一つの戦域とする「ワンシアター」構想を言い出した。5月には「オーシャン」構想と言い換えているが、狙いは同じだ。
実際、レゾリュートドラゴンに合わせ、日米韓の軍事演習「フリーダムエッジ」を行った(9/15〜19)。昨年の6月と11月に続く3回目の今年は、米韓の図上演習「アイアンメイス」も同時に実施された。ともに朝鮮の核ミサイルに対抗するものだが、台湾から朝鮮半島まで、同時に「戦争状態」にしているのである。
自衛隊はこの他に、オーストラリアからフィリピン、インドネシア、タイ、インドなどが米軍と行う軍事演習に広く参加している。「準同盟国」とするオーストラリアとは「共同の抑止力の強化」(9/5共同声明)を確認した。「中国の危険かつ挑発的な行動の激化」との認識を共有し、対中国包囲の「オーシャン」構想の中核に位置づけている。
軍事演習の相手国はいまやNATO(北大西洋条約機構)諸国に拡がっている。8月には初めて英空母の警護行動を行った。演習時でも他国軍隊を警護し、武器使用もできる「武器等防護」権限が自衛隊法の改定で与えられた。戦争法のもたらしたもののひとつだ。
空自のF15戦闘機が米国、カナダを経由して英国、ドイツに派遣された(9/14〜28)。日本の戦闘機が領空を通過することを許可したこと自体、「防衛交流の深化」だと自衛隊は受け止めている(9/13朝日)。ロシアと軍事緊張を高める欧州にとっても都合がいいのだ。
戦争法による集団的自衛権行使容認は自衛隊の歯止めをはずした。
反対する市民を非難
沖縄では、軍事演習に対する抗議行動が相次いでいる。与那国島では8月に選出された新町長が、高機動ロケット砲システム「ハイマース」と輸送機「オスプレイ」の搬入を拒否。沖縄防衛局は演習計画を変更した。
宮古島では、平良港から駐屯地への物資輸送を阻止し、「訓練中止」に追い込んだ(9/13)。中谷防衛相は「過度な妨害行動で、訓練の内容の変更を余儀なくされたことは大変遺憾」(9/19)と市民の行動を責めたが、沖縄県玉城デニー知事が「なぜそのような抗議活動が起きるのか受け止めるべきだ」と語るように、原因は自衛隊の横暴な振る舞いにある。8月、宮古駐屯地トップの警備隊長が市民団体を脅す事件が起こっており、その責任も取っていない。
戦争法成立10年。戦闘訓練や軍隊がわがもの顔で日常的に登場するようになった。生活の場から軍事行動への抗議を続けよう。憲法違反の戦争法を廃止させよう。
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