2025年10月10日 1890号
【国連総会 孤立深めるネタニヤフ政権/浮かび上がる日米政府の犯罪性/国際法違反のイスラエルを処罰する/国連決議を実行せよ】
|
パレスチナ問題の解決が最大の議題である第80回国連総会。イスラエルのジェノサイドを止め、「二国家解決」への具体的なプロセスを進めることが問われた。だが、ネタニヤフ首相、トランプ大統領は言いたい放題。それに歩調を合わせる日本政府はパレスチナ国家承認さえ見送った。全世界80億人の目の前で引き起こされている虐殺をいますぐ止めるためにより広く、より強い行動が求められている。
独立を保障せよ
設立80年となる国際連合。加盟国は51か国から193か国へと大きく増えたものの、国連憲章に掲げる設立目的「平和と安全の維持」は達成できていない。「平和的手段により正義と国際法の原則に従って実現」(国連憲章第1条1項)すべき、パレスチナ解放はいまだ先が見えない。
国連総会は1年前の9月18日、イスラエルのパレスチナ占領、ジェノサイドは国際法違反と断罪し、1年以内に占領地から撤退するよう通告し、加盟国には武器供与停止等を求める決議を124か国の賛成で採択したが、事態は悪化している。今年は、「二国家解決」に向けた決議が142か国で採択された。決議をいかに実行するかが問われている。
かつて国連は、パレスチナをユダヤ人国家とアラブ人国家に分割する案を1947年の総会で決議(181号U)した。この時の分割決議はシオニストが脅迫と買収により、辛うじて採択に持ちこんだものだった。当時の加盟57か国中、46か国(11か国の棄権・欠席)が投票し、3分の2をわずか2か国超える33か国が賛成だった。フランスは米国からの経済支援打ち切りの脅しに負け、賛成した。トルーマン米大統領(当時)は、「少数の極端なシオニストの指導者によるもの」と実態を語っている。
同決議はイスラエル建国の根拠になっているが、パレスチナ解放機構(PLO)もこの決議をもとに独立宣言(88年)を行なった。シオニストらはパレスチナ国家を認めないと叫んでいるが、自らが多数派工作した決議をも否定するものだ。
今回の「二国家解決」決議は米国やイスラエルの妨害をはねのけて得たものだ。イスラエルの妨害を排除し、パレスチナ独立をいかに保障するかが問題なのだ。
不信買う石破演説
「二国家解決」に賛成しながらパレスチナ国家承認を見送った日本政府の態度はパレスチナ民衆と世界の不信を買った。石破茂首相は国家承認について「するか、否か」ではなく、「いつするか」の問題だと語った。では、いつする気なのか。「イスラエルが『二国家解決』実現への道を閉ざすことになる更なる行動をとる場合」だという。
つまり、イスラエル次第だというのだが、イスラエルはそもそも「二国家解決」など考えてもいない。石破の言う「二国家解決」実現の道とは何のことなのか。イスラエルがその道を閉ざす更なる行動とは、何を指しているのか。まったく意味不明である。
政府内には「承認によりイスラエルが暴発するリスクがある」との声があったという(9/17テレ朝)。国連人権理事会の調査委員会が「ジェノサイド」と認定(9/16)してもなお、イスラエルは「暴発」していないとでもいうのだろうか。
実は、米政府が「パレスチナ国家承認を見送れ」と要請をしていた(9/12時事)。日本政府はこれに乗った。「二国家解決」をおろすわけにはいかない石破政権は支離滅裂な言い訳をせざるを得なかったということだ。
相次ぐ抗議の退場
国連総会に登場したネタニヤフ首相はパレスチナ国家を承認した国を批判し、「パレスチナ国家に反対するのは国家の政策だ。イスラエル国民の90%以上がそうなのだ」とうそぶいた。
イスラエルの国内世論は、1年前でパレスチナ国家に反対60%であり、賛成30%(24年10月チャンネル12)。他の調査では反対51%、賛成36%(24年2月イスラエル民主主義研究所)。ネタニヤフの言う90%以上反対とは違う。むしろ、ネタニヤフ政権の支持率は30%程度に落ちているのだ(4/1JFEED)。
ネタニヤフは、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ている中、登壇した。多くの政府代表が抗議の退席をする中でも、自らの主張を言い放った。

一方、録画による演説を余儀なくされたのが、パレスチナのアッバス大統領だった。トランプ政権がビザを発給しなかったからだ。
アッバスは「1000以上の国連決議が未履行のままだ」とし、改めて▽ガザ戦争の即時、恒久停止▽国連機関による人道支援▽双方の人質、拘束者全員の解放▽占領軍の完全撤退などを訴えた。PPSF(パレスチナ人民闘争戦線)マジュダラニ委員長は「二国家解決」のプロセスを示したものと評価した。
「二国家解決」はいかにパレスチナ解放に進むかだ。その最大の障害がイスラエル極右政権であり、トランプ政権であり、それに追随する日本政府であることが明瞭に浮かび上がった国連総会となった。
イスラエルと手を切れ
ネタニヤフ演説の日(9/26)、ニューヨークでは数千人の抗議行動が取り組まれた。パレスチナ青年運動などの呼びかけで、全米から集まった市民は「ネタニヤフを逮捕せよ」と訴えた。11月にニューヨーク市長選を戦うDSA(アメリカ民主主義的社会主義者)のゾーラン・マムダニは、市長になれば、ネタニヤフがニューヨークを訪れれば逮捕すると語る。米国はICC加盟国ではないが、国際法に基づく行動をとるというのだ(9/13Newsweek)。
この日の前日、マイクロソフトがイスラエルの諜報部隊へのクラウドサービスなどの提供を停止したと報道された。パレスチナ人の通話記録を蓄積し、攻撃目標を設定するAI兵器のデータ庫になっていた。マイクロソフトは「イスラエル軍の使い方を知らなかった」と言い訳しているが、BDS(ボイコット・投資引き揚げ・制裁)運動の成果だ。
BNC(パレスチナBDS全国委員会)は、「イスラエルはマイクロソフトからアマゾンのウェブサービスにデータを移そうとしている」と、マイクロソフトやアマゾン、グーグルなどの企業への圧力強化を呼びかけている。
イスラエルは確実に孤立している。日本政府・企業にイスラエルと手を切れと迫ろう。AFZ(アパルトヘイトフリーゾーン)を広げ、パレスチナ連帯運動を拡げよう。

 |
|