2025年10月10日 1890号

【消費減税拒む自民総裁選候補/輸出戻し税で納付ゼロの大資本/消費税はただちに廃止だ】

 物価高に対抗するため減税を求める民意は強い。時事通信調査(9/12〜9/15)では、物価対策に消費税減税を挙げる人は45・8%、所得税・住民税減税28・0%、計73・8%に達している。

 7月参院選の重要な政治課題に消費税問題が浮上していた。自公与党は消費税減税を否定し、野党が消費税減税を公約に掲げた。自公が議席を減らし、過半数を切った。要因の一つに、消費税減税への願いを与党が拒んだことがある。

 消費税収に依拠する政府とその恩恵を受ける大資本はこの声を否定しようとした。消費税減税を求める声が大きくない、とする調査結果が「根拠」とされた。政権と財界の応援団である日本経済新聞社とテレビ東京の調査(5/23〜5/25)では、財源との関係を明示した質問には「社会保障の財源を確保するために税率を維持するべきだ」が55%だった。

 自民党総裁選立候補者の大半は消費税減税反対を明言している。だが、多数を占める野党は消費税減税を掲げており、世論がさらに強まれば、次期政権で消費税減税は再び政治課題とならざるを得ない。

トランプ関税の影響

 参院選前に消費税減税が政治課題になったのにはトランプ関税も影響している。トランプ大統領は「消費税が関税障壁のようになっている。だから、消費税がある国には報復関税をかける」旨のコメントをした。

 このコメントは、米国には消費税がなく売上税であることに起因する。「アメリカの売上税も、輸出の時には売上税はかかりません。仕入の段階でも税がかかっていませんので、収支はゼロ。消費税がある国は輸出すればするほど消費税還付がある」(山田真哉「日本の消費税=関税? トランプ大統領 発言の真相とは」)ことになる。

 つまり、消費税の輸出戻し税が実質的な輸出補助金になっており、消費税を減額せよ、そうでないと高額関税をかける≠ニ求めたのだ。その後日米関税交渉はいったん区切りがつけられたが、半導体などの未決着や5500億ドルの対米投資内容等、課題は残されたままだ。

大企業には輸出戻し税

 トランプの輸出戻し税批判は制度の違いからきており、指摘そのものは本来、検討すべき問題なのだ。

 消費税には0%という税率がある。これは輸出売上にだけ適用され、輸出の時に0%課税をするので税額が0となる。消費税額は、「売上にかかる消費税額」から「仕入れ・経費にかかる消費税額」を引いて計算する。輸出では、「売上にかかる消費税額」が0円なので「仕入れ・経費にかかる消費税額」がマイナスになり、輸出戻し税が生じる。

 この制度を「活用」するのは輸出大企業で、国内売上についての消費税納付がなくなるほど大きい。トヨタは6811億円の輸出戻し税(2024年4月から25年3月の事業年度、湖東京至税理士の試算)を得ており、結果として消費税を全く払わないで済んでいる。

 

 経団連は、昨年10月に発表した「2025年度税制改正に関する提言」で「消費税については、(中略)中長期的な視点からは、その引上げは有力な選択肢の1つ」として消費税増税を求めている。消費税増税がされても輸出大企業はその影響を受けないからだ。


消費税減税・廃止へ

 この輸出戻し税=還付金の詳細は、税務署も大企業も公開していない。「全国商工新聞」(9/8)で湖東税理士は、23年度の消費税収が約27兆8700億円、うち9兆3100億円が還付金で、国に入るのはその差額18兆5600億円と推計する。還付金のうち「予定納税の還付金や設備投資をした場合の還付金などが約1割あるとして、輸出還付金は9割の8兆3800億円」、その多くを輸出大企業が得ていると指摘する。

 大資本をうるおす輸出戻し税は、消費税収全体の3割に上る。低所得者に重い負担となる逆進性だけでなく、輸出大企業に圧倒的に有利な制度を持つ消費税。その大企業に応分の負担を求め、消費税減税から廃止への声をさらに高めよう。

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