2025年10月10日 1890号
【ミリタリー/中谷防衛相が市民の抗議活動を非難/旧日本軍体質の継承は沖縄戦を再来させる】
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9月19日、中谷防衛相が定例記者会見の冒頭で、沖縄での自衛隊の日米共同実働訓練「レゾリュート・ドラゴン25」(9/11〜9/25)などに対する市民の抗議活動や、陸上自衛隊第15旅団のエイサー隊が「沖縄全島エイサーまつり」に出演する際、市民団体が取りやめを要請したことなどについて、「過度な抗議、妨害行為が続いている」と発言した。
防衛相が市民の抗議活動に対し、直接的に言及、非難するのは異例だ。市民の抗議が広がっていることへの苛立ちと焦りが現れていることは間違いない。同時に、「国民を守るための新しい軍隊」としての認知をこの際一気にすすめたいとの強硬姿勢も垣間見える。
中谷発言と歩調を合わせて、産経新聞主張は「沖縄県内で、左派勢力による自衛隊への異常な妨害活動が相次いでいる」(9/18)と騒ぎ立てた。中谷も産経も、沖縄の市民の抗議行動は「左派勢力による」ものに過ぎないと描きたいらしい。
だが、住民説明会すらろくに行わず自衛隊増強や共同訓練を強行し、自衛隊が横暴な振る舞いを続けることに「沖縄戦の再来」の危機を感じ取るのは決して「左派勢力」だけではない。
中国との戦争を想定し最前線基地として軍備増強が進められている与那国島で、「これ以上の軍拡は望まない」と訴えた新町長が誕生した(8/24町長選)。その影響は大きく、今回の日米共同訓練では与那国島で予定していたハイマース(高機動ロケット砲)や垂直離着陸輸送機オスプレイの展開は見送られ、規模を縮小せざるを得なくなった。
また、中谷は定例会見で「現行憲法の下で専守防衛に徹し、厳格な文民統制を確保している。旧憲法下で存在した旧日本軍とは全く異なる」と強調。会見に先立って、わざわざ陸上自衛隊幹部候補生学校の沖縄戦に関する学習資料の大幅見直しを指示したことを発表した。戦時中、沖縄に展開した第32軍について、これまでは「本土決戦準備のために偉大な貢献をなした」と記述していたが、改定版では「偉大な貢献」という表現を削除するなど「大幅な見直し」を行ったとする。
「見直し」は当然だが、あまりに露骨だった表現を若干修正したものに過ぎない。自衛隊の沖縄戦認識には何も手を付けていない。市民の抗議と抵抗を敵視し、住民の声に耳を傾けようともせず戦争準備に突き進む現在の自衛隊は、旧日本軍と何一つ変わっていない。
「沖縄戦の再来はごめんだ」の声をさらに広げよう。沖縄のみならず全国の住民の抵抗を押しつぶすことはできない。
豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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