2025年10月10日 1890号
【読書室/日本被団協と出会う 私たちは「継承者」になれるか/大塚茂樹著 旬報社 1700円(税込1870円)/核軍拡と戦争政策阻む力】
|
本書は、昨年、ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の今日までの歩みと、核廃絶の世界の運動に果たしてきた役割を紹介し、「私たちは『継承者』になれるか」と問いかけている。
原爆被爆者は被爆後、占領軍に沈黙を強いられ、日本政府からも見放され、戦後10年間、孤独と病苦と生活苦、偏見と差別に耐え続けざるをえなかった。
1953年のビキニ水爆実験によって核兵器禁止の世論が高まり、1955年第1回原水爆禁止世界大会が広島で開催され、翌年長崎での第2回世界大会の時に被団協が結成された。結成宣言において「私たちの体験をとおして人類の危機を救おう」と決意表明し「核兵器の廃絶と原爆被害に対する国の補償」を求めて運動に立ち上がった。
原水禁運動の分裂の影響を受け運動の停滞時期もあったが、被団協は統一を守り、1966年には「原爆被害の特質と『被爆者援護法』の要求」というパンフレットを発行し、国家補償の援護法制定運動の高揚期を迎える。だが、政府は戦争「受忍論」を理由に拒否し続け、1994年に成立した「援護法」でも国家補償は認められなかった。
被団協は2016年から核兵器廃絶国際署名を提起。国際会議での被爆者の訴えは核兵器禁止条約の採択に大きな役割を果たした。日本政府には、国家補償の援護法実現とともに、アメリカの「核の傘」から抜け核兵器禁止条約に参加することを要求し続けている。
戦後80年の今、被爆体験を継承し、被団協の運動を次代につなげ、日本の戦争政策と世界の核軍拡と対決することが私たちの責任として問われている。(N) |
|