2025年10月24日 1892号
【原発のない地球へ(30)危険な核のゴミをこれ以上増やすな】
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原発再稼働推進の一方で、全国の原発の使用済み核燃料保管は限界に近づいている。貯蔵プールが満杯になれば、冷却管理を必須とする危険な使用済み核燃料の保管場所がなくなり、原発を止めざる得なくなる。
原発の管理容量に占める貯蔵量(2025年6月現在)は現在、東京電力・柏崎刈羽(かりわ)81%、関西電力・美浜82%、高浜87%、大飯(おおい)90%、中部電力・浜岡87%、日本原電・東海第二84%、四国電力・伊方80%、九州電力・川内(せんだい)85%と軒並み8割を超えている。
そこで東電は、中間貯蔵施設(青森県むつ市)へ搬出し、関電は敷地内での乾式貯蔵などを考える。中間貯蔵施設は現在1か所しかない。自然の空気で熱を取り除く乾式貯蔵は、プールで十数年冷やした上でないと取り扱い困難で、貯蔵施設自体が老朽化や中性子遮蔽(しゃへい)材の劣化による放射能漏れの危険を常に伴う。使用済み核燃料自体を減らす対策ではなく、厄介な核のゴミの始末にずっと手を焼くことになる。
そこで切り札として核燃料サイクル計画がある。使用済み核燃料を高温・高濃度の硝酸で溶解しウランやプルトニウムを取り出してMOX燃料として利用する。その結果生まれる高レベル放射性廃棄物はガラス固化して最終処分場で地下300メートル以上に埋めようというもの。原料のウランの全面輸入に頼る日本は、エネ資源の安定的確保と核のゴミ削減にと再処理工場の稼働に原発の将来を賭ける。
しかし青森県六ヶ所村で1993年に着工した再処理工場はいまだに稼働していない。現在は廃止された日本最初の東海再処理工場では、ガラス固化がうまくできずに高レベル放射性廃棄物は残されたままだ。再処理過程で大気中に放出される大量の各種放射性物質、福島原発事故の比ではない年間約9700兆ベクレルというトリチウム汚染水発生、硝酸による配管・溶解槽の腐食などへの有効な解決策も確立していない。なんらかの要因で冷却機能が麻痺すると蒸発乾固(かんこ)、プルトニウムの臨界事故(核分裂連鎖反応)といった危険性を抱えたままだ。
MOX燃料の使用については、高速増殖原型炉「もんじゅ」がナトリウム漏れなどトラブル続きで2016年に廃炉が決定。代わって、高速実験炉「常陽」の2026年運転再開を目指している。使用済み核燃料をフランスに搬出して作られたMOX燃料を使用するプルサーマル発電を高浜発電所などで実施しているものの、これも問題だらけだ。原子炉を停止する際には「制御棒」を挿入して中性子を吸着させるが、MOX燃料はウラン燃料より中性子を吸収しやすいため制御棒の効きが悪くなる上、原子炉圧力容器の脆弱(ぜいじゃく)化が早まり、放射能量や熱量が多くプール保管も長期化する。MOX燃料は燃料棒の加熱・破損もしやすく、仮に事故が起きた場合は猛毒の放射性物質が大量に放出し、現行原発より大事故につながる。
再稼働によって、もうこれ以上、危険な核のゴミを増やしてはならない。 (Y)
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