2025年10月31日 1893号 
            【今求められるパレスチナ連帯の強化/植民地政策・アパルトヘイト支える「拘禁」/軍司法制度・「行政拘留」を撤廃せよ】
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             ガザ停戦でイスラエル軍の大規模な攻撃は止まったが、虐殺や物資搬入妨害の合意違反が起きている。現地の闘いと連帯し、後戻りさせない闘いの強化が求められている。不当に拘束された1万人近いパレスチナ人が刑務所で虐待されている。恒久停戦とともに、入植者植民地政策、アパルトヘイト体制を支える軍司法制度、「行政拘留」の撤廃、拘禁者の解放を実現しなければならない。 
            「停戦」破壊策動
             ガザ停戦合意の第1段階では、停戦発効後72時間以内に、ハマスが拘束した「人質」の残り48人(遺体含む)の引き渡しとイスラエルが拘禁するパレスチナ人約2000人の解放を行うことになっていた。 
             
 ハマスは期限の10月13日までに生存する人質20人を解放したが、10体の遺体返還ですべて終えたと表明した(10/16)。残る18人の遺体は、瓦礫の下や地下道、イスラエル軍の占領地に散在し、回収するには「特別の機器や時間がいる」としている。 
             
             遺体の回収が困難になったのは、人質の救出よりガザ制圧を優先したイスラエル軍の攻撃に原因があるのは言うまでもない。占領軍はいまだ、ガザの53%を制圧しており、近づく者を射殺している。 
             
             イスラエルは「ハマスの合意違反だ」と戦闘再開を狙っている。ただ、米政府も「遺体返還には時間がかかる」と当初から容認しており、今のところネタニヤフ政権の暴走は抑えている。後戻りさせてはならない。 
             
             一方、イスラエル軍は停戦後も、少なくとも70人以上のパレスチナ人を殺害している(10/19)。停戦違反は明らかだ。また人質の遺体1体に対し、パレスチナ人被拘禁者の遺体15体の比率で返還することになっているが、まだ135体にとどまっている(10/18現在)。しかも、身元情報を提供しなかった。首にロープを巻かれ後ろ手に縛られたままの遺体、拷問の痕が残る遺体が多くあった。 
             
             パレスチナ人を人間として扱わないイスラエルは死者の尊厳をも守らない非道さを示している。返還されないパレスチナ人の遺体はまだ600体以上ある。 
            抵抗運動の弾圧手段
             「人質交換」でイスラエルが解放に応じたのは、パレスチナ人被拘禁者1968人。「テロ攻撃」に関与した罪などで終身刑や長期刑を科した250人の他、この2年の間にガザで拉致した1718人だ。解放を待ちわびた市民は歓喜に沸いた。パレスチナ現地の粘り強い闘いの成果だ。 
             
             だが、イスラエルに拘禁されているパレスチナ人は他に9100人以上いる。うち約3500人は「行政拘留」された人びとだ。何が拘留理由か知らされない。 
             
             イスラエルは、パレスチナ占領地では軍の司法制度を適用し、軍司令官が「安全上の理由」で拘束命令を出し、被拘束者は軍事法廷で裁かれる。有罪率はほぼ100%。毎年、何千人ものパレスチナ人を裁判にかけ投獄してきた。 
             
             この軍事裁判によるもの以外に、起訴さえしないまま実質無期限に投獄できるのが「行政拘留」だ。英国委任統治領時代の植民地法を引き継ぐもので、まさに「反乱を抑える」法なのだ。これを、イスラエル国籍のパレスチナ人には「非常事態権限法」(79年)で、ガザ地区では「非合法戦闘員抑留法」(05年)で、ヨルダン川西岸地区での「軍事命令」を根拠に、イスラエル国内だろうと占領地だろうと、パレスチナ人を逮捕し、抵抗闘争を抑え込む手段として使ってきた。 
             
             この軍司法制度と「行政拘留」は、イスラエルの入植者植民地政策とアパルトヘイト体制を支える根幹をなすものだ。 
            ジェノサイドの最前線
             67年のイスラエルによる占領以来、拘束経験のあるパレスチナ人は100万人にのぼるという。ガザ戦争後、刑務所での虐待は一層過酷さを増した。独房に倍の人数が押し込まれ、食事は量・質とも極端に悪くなった。暴行・虐待は日常的に繰り返されている。 
             
             だが、これまで獄中でも力強い抵抗闘争が行われてきた。パレスチナ囚人と連帯する国際組織「TADAMON」によれば、出廷拒否やハンガーストライキなど「囚人運動」が組織され、大きな成果を上げてきた。紙とペン、書籍などを要求。識字学級の開設から刑務所内で大学の修士号が取得できるプログラムを運営する。 
             
             「囚人運動はパレスチナ解放闘争の一部」であり、「囚人運動が社会の問題や課題の解決に貢献してきた」。刑務所内でのストライキに呼応し、全国的な運動が起ってきた。囚人運動を牽引するさまざまな政治勢力の指導者たちは一致して、ガザと西岸の分断について「和解文書」を提案しているという。 
             
 実際、イスラエル軍は釈放した活動家が再び抵抗運動の核になることを恐れている。解放の祝賀行為をさせないよう脅したり、「いつでも監視しているぞ」と書いたビラをドローンで撒(ま)くなど、警戒を強めている。 
             
             被拘禁者・家族を支援するPPS(パレスチナ囚人協会)などの団体が「ジェノサイドの最前線としての刑務所」と題し、パレスチナ政治犯に対する2年間の戦争犯罪を報告(10/7)。西岸地区だけで約2万件の逮捕が行われ、1600件は子ども、595件は女性だ。前例のない件数になっている。爆撃によるのと同様、逮捕・拘禁による拷問・治療拒否・性的暴行など「ジェノサイドの最前線」としての実態を暴いている。 
             
             11月に来日するモハマド・アローシュさんが所属するPPSF(パレスチナ人民闘争戦線)は、PPSなどとともに拘禁者の安否確認や早期解放の闘いを進めている。拘禁・拷問はジェノサイドだ。現地での不屈の闘いに学び、パレスチナ解放へ国際連帯の闘いを強化しよう。 
             
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             トランプ大統領は10月13日、エジプト、トルコ、カタールの首脳とともに「永続的な平和と繁栄のためのトランプ宣言」なる文書に署名した。立ち合い人に20か国以上の首脳を招集した自画自賛のセレモニーに過ぎなかった。宣言にはパレスチナの自決権も独立国家への保障もない。署名したエジプトやトルコは、パレスチナ連帯行動の活動家を拘束し、弾圧しているのだ。 
             
             トランプやネタニヤフを一層孤立化させるためにも、各国政府への闘いが重要だ。日本政府に国際法違反を重ねるイスラエルへの処罰を要求しよう。 
             
              
             
              
             
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