2025年10月31日 1893号 
            【柏崎刈羽原発再稼働へ焦る東京電力/背後に「経営危機」/民意はノーだ 今こそ廃炉を】
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             焦点になっている新潟・柏崎刈羽原発の再稼働に関し、小早川智明・東京電力社長は、地元新潟県内での新事業創出や雇用促進に総額1000億円を拠出することを新潟県議会で表明した。東電に限らず、電力各社はこれまでも原発の地元地域に巨額の資金拠出を繰り返してきた。名目は「寄付」だが、原発運転への地元「理解」を取り付けるための事実上の買収である。 
             
 東電は、ここまでしてなぜ柏崎刈羽原発の再稼働を急ぐのか。 
            ささやかれる「経営危機」
             大手メディアはほとんど報じていないが、この間、経済専門紙誌で繰り返し報じられてきた事実がある。東電の経営危機だ。 
             
             東電は、福島原発事故後の「安全対策」費として、2019年までの8年間で1兆1690億円もの巨費を投じた。2013年段階では700億円と見積もっていたが、新規制基準導入で一気に4700億円に増加。2016年には6800億円まで膨らんでいた。 
             
             東電は、すでに福島事故の賠償や廃炉・除染費用で23兆4千億円もの巨費がかかっており、原子力損害賠償・廃炉等支援機構から貸付を受けている。東電は賠償・廃炉部分の返済義務を負っている。 
             
             大半を輸入に頼る燃料費や資材費は円安などの影響で高騰。個人向け契約は新電力に流出し、東電の経営は苦しさを増す。2025年4〜6月期決算では、ついに8576億円のもの巨額赤字を計上した。福島第一原発1〜3号機の燃料デブリ取り出しに必要な9030億円もの費用を計上したためである。 
             
             だが、燃料デブリの取り出しは廃炉作業を行う上で必要なのか。それ以前に本当に実現可能なのか。1986年に事故を起こしたチェルノブイリ原発では、事故炉(4号炉)を石棺で閉じ込めたため、デブリ取り出し自体、行っていない。 
             
             福島事故以降まったく稼働せず、1ワットの発電もしていない柏崎刈羽に1兆円。必要もないデブリ取り出しのために1兆円。福島の反省もないまま行われた国の原発回帰政策のため、東電は2兆円をドブに捨てさせられたことになる。 
             
             原発が再稼働しても、東電にもたらされる利益は1基当たり年に1000億円。柏崎刈羽6・7号機両方を再稼働できても、ドブに捨てた2兆円回収に10年かかる。原発回帰は本来東電にとっても割に合わないのだ。 
            東電追い込む民意
             新潟県議会は、今年4月、「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」が提出した14万3196筆もの直接請求署名を否決し葬り去った。 
             
             一方、新潟県が行った意識調査の中間報告(県内30全市町村6千人中3360人が回答)では「再稼働の条件が整っていない」が「どちらかと言えば」を含めて60%。「東電による運転が心配」は69%に上った。「県民合意」を装うために行われた調査ですら、根強い県民の東電不信が示された。柏崎刈羽では、9月に入っても制御棒が引き抜けないトラブルが発覚しており、県民が東電に不信を抱くのは当然だ。 
             
             揺るがぬ民意を前に、花角英世・新潟県知事による再稼働への意思表明は遅れている。当初は今年夏には再稼働できるとの楽観的な見通しもあったが、花角知事周辺からは「意思表示は11月以降」との声も聞こえてくる。2026年の知事の任期満了まで再稼働への同意は取り付けられないとの見方も広がっている。 
             
             新潟日報が2024年、新潟県議を対象に行った再稼働の是非に関するアンケートでは、自民党県議32人のうち「認める」は3人だけ。「認めない」が12人。福島やチェルノブイリ事故を根拠に「原発は不要」との強硬意見すらあった。 
             
             新潟県が東北電力エリアであることも事態を複雑にしている。再稼働が実現しても、柏崎刈羽の電力を使うのは首都圏であり新潟県民ではない。利益を受ける地域と、事故が起きれば被害を受ける地域が分断されている。福島と同じ差別構造が、揺るぎない民意と併せ、住民投票条例制定直接請求を否決した県議会自民党を揺さぶっている。 
             
             署名に応じた14万人、その背後にいる県民とともに柏崎刈羽原発再稼働を阻止し、廃炉に追い込もう。 
             
              
             
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