2025年11月14日 1895号
【「核実験再開」「原潜建造」―危ない各国首脳発言/日米韓の異常な核推進≠ノストップを】
|
トランプ大統領が日本、韓国、中国との首脳会談に臨んだ。とりわけ日本、韓国との間では軍需産業の強化、協力に合意した。東アジアの緊張をあおる軍拡政策を止めなければならない。
「5年で同数の核」
トランプ大統領は中国の習近平国家主席との会談を前に、SNSに「核実験再開を指示」と投稿した(10/30)。「(米国は)どの国よりも多くの核兵器を持っている」が、中国は「5年以内に同数となるだろう」。だから「対等な立場で核実験を開始するよう指示した」という。
中国は現在600発の核弾頭を保有している(2025年6月現在、長崎大学核兵器廃絶研究センター)。米国防総省は、30年までに1000発になると推定。一方、米国は5277発を保有し、うち1577発は退役・解体待ち。現役は3700発、作戦配備しているのは1770発だ。中国の核が米国の核と「同数」になるというのは、どう数えてもあおりすぎだ。
中国の軍事的脅威を印象づけたいとの思惑にしろ、歴史に逆行する「核実験再開」は許されない。核弾頭の廃棄こそ進めるべきだ。
「米軍の負担軽減」
トランプは韓国李在明(イジェミョン)大統領との会談で、韓国が原子力潜水艦を建造することを承認した(10/29)。
李はウラン濃縮の制限を緩和するなど「米韓原子力協定見直し」をトランプに求めた。原潜燃料を独自確保ができれば、「通常兵器搭載の原潜により朝鮮半島周辺海域を防衛でき、米軍の負担軽減になる」と説得したという。
トランプは「この潜水艦はフィラデルフィアで建造され、米国の造船所が復活する」と応じた。フィラデルフィアの造船所は韓国のハンファ社が買収したものだ。それでもトランプは米国内での製造業「復活」の手柄にできると思っている。
米国の造船能力の低下が言われて久しい。自国の原子力空母や原潜の定期整備すらおぼつかない状態にある。イラク戦争でトマホークを発射した原潜ボイシは15年に定期点検に入ったが、造船所の能力不足のため再就航は30年になると言われている。23年時点で潜水艦49隻の40%は修理待ちの状態。米海軍は「日本と韓国の造船産業を高く評価」し、休眠状態の米国造船産業を復活させ、世界トップの造船能力のある中国に対抗したいと考えている(24年11/17BUSINESS INSIDER)。
韓国もまた、原潜建造技術を習得することができる。李の経済政策は、伸張著しい韓国軍需産業を一層成長させることが柱の一つだ。
「トップセールス強化」
韓国におくれを取る日本の軍需産業だが、官民連携体制で強化を図る方針が出されている。今回の日米会談でも「造船に関する協力覚書」が結ばれた。「日米造船作業部会」の設置や米造船産業への投資促進、AIやロボット技術協力、人材育成などを含んでいる。
米国の製造業は停滞が著しい。GDPに占める割合は10%程度、日本やドイツの半分に過ぎない。大儲けしている軍需産業も生産能力の低下が懸念されている。日米会談では日本からの4000億ドル(約60兆円)の投資とともに、武器の共同開発にも合意している。
小泉防衛相とヘグセス米国防長官は「防衛生産・技術基盤の強化が共通課題」とし、「相互補完する重要性を再確認」。中距離空対空ミサイル(AMRAAM)の共同生産や米軍艦船・航空機の共同維持整備などに合意した。日本の軍需産業が米軍需産業を補完する過程を通じて、侵略を支える産軍複合体の育成をめざす。既に小泉は、武器輸出にむけ「トップセールスを強化していきたい」(10/25読売)とその先を語っている。産業を軍事化させてはならない。
* * *
高市政権は、軍事費を一気にGDP比3・5%(関連費含め5%)への引き上げを狙っている。額にして20兆〜30兆円の規模だ。国家予算は120兆円弱。そのうち税収は79兆円である。税収額が変わらなければ、38%を軍事及び関連費に使うことになる。
人を殺し、生活を破壊するための兵器生産や組織づくりに税金の3分の1を使うなど異常という他はない。
軍拡ではなく軍縮を。税金は、戦争のためではなく命と暮らしのために使え、と大きく声を上げる時だ。

 |
|