2025年11月21日 1896号
【コラム 原発のない地球へ(32)/玄海原発に侵入したのはドローンではなかった?】
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少し古い話だが、今年の7月26日午後9時頃に佐賀県の九州電力玄海原発の敷地上空でドローンとみられる3つの光る飛行物体が目撃された。九電は、原子力施設の運転に影響を及ぼすおそれがあるとして、初めて「核物質防護情報」を通報。警察も出動して捜査したが、物体の発見・特定はできなかった。その後、原子力規制庁は九電と面談し経過を聞き、9月10日に非公開の臨時会議で初動対応の課題と今後の方針について検討。光が目撃されてから通報までに45分を要したこと、光る飛行物体についての判断が揺れたこと、機微情報の対外的な公表のあり方などが課題とされた。この事案を受けて、九電は警備員がカメラを携帯するなどの改善策を打ち出した。
ところが9月19日になって佐賀県警は県議会で「航空機の光をドローンと勘違いした可能性が高い」と答弁した。目撃された時間帯に周辺を飛行していた航空機の光の色や発光パターンが、目撃された光と一致したというのが理由だ。
しかし、飛行物体は少なくとも2時間は原発周辺を飛行していたと報告されている。そもそも通常の航空機が原発周辺をぐるぐる飛びまわることなどあり得ない。この県警の発表には、原発上空をドローンが飛んでいたという事実を無かったことにしたいという思惑が働いているのではないだろうか。
この間の国際情勢は、国家間の対立が深まり、それが武力衝突や戦争へと進んでしまった際には、核施設が攻撃対象になることを示した。2022年3月にはロシア軍がウクライナのザポリージャ原発を攻撃・占拠。同年8月にはロシアのクルスク原発をウクライナがドローンで攻撃。今年の6月にはイスラエルが突然イランの核施設を空爆し、米国がイランの地下核施設に地中貫通爆弾(バンカーバスター)を撃ち込んだ。
一方、防衛省は8月29日、国産の長射程ミサイル(射程1000`)の配備計画を発表した。今年度中に陸上自衛隊健軍駐屯地(熊本市)を皮切りに、全国6道県に配備する。これは、2022年に閣議決定された「安保3文書」に基づく「敵基地攻撃能力」配備の具体化にほかならない。
日本が現実に「敵基地攻撃能力」を持つようになれば、敵国とみなされた国も日本を標的にした軍事戦略を立てるのは当然だ。その際、海岸沿いに立地する各地の原発が標的にされる可能性がある。長射程ミサイル配備が予定される茨城県百里(ひゃくり)基地の近くには東海再処理工場や再稼働の準備を進める東海第二原発がある。百里基地を叩くという口実で原発が狙われたら、首都圏は壊滅すると言われている。
今回の事件は、ドローンが原発敷地に簡単に侵入できることを示した。戦争準備を進めながら「原発の最大限活用」を進めるなど、まったく常軌を逸していることがわかる。速やかに原発ゼロを実現しなくてはいけない。 (U)
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