2025年11月21日 1896号

【見聞感/元イスラエル軍兵士ダニーさんが日本に問いかけるもの】

 ―軍のパイロット候補生時代、低空飛行の練習中、羊の群れを連れた遊牧民ベドウィンを見つけた。指導教官が「からかってやろう」と言い、飛行機の高度を下げると羊は驚いて逃げていく。私は「やった!」と興奮した。今考えるとひどいことをしたと思うけど、その時は王様のような気分だった―。

 元イスラエル空軍兵士ダニー・ネフセタイさんは1957年生まれ。80年代から日本に移住し家具職人となり、その後2008年のガザ攻撃をきっかけに、反戦・反軍国主義の講演を日本で行うようになった。ナチズム的政治姿勢に傾き戦争し続ける祖国を嘆きつつも分析し、「日本は後を追わないでほしい」と警鐘を鳴らしている。

 23年10月からのガザ包囲以降はさらに積極的に活動し、その年の12月に出版した『イスラエル軍元兵士が語る非戦論』(構成―永尾俊彦、集英社新書)は小紙1808号「読書室」でも紹介した。

 「人も、国も、軍事力に“酔っぱらう”んだ」とダニーさんは語る。イスラエルの兵士もハマスの兵士も、自分たちが良いことをしていると思っている。ダニーさん自身がそうだった。冒頭の空軍兵士時代の体験談は、24年3月出版の『どうして戦争しちゃいけないの? 元イスラエル兵ダニーさんのお話』(あけび書房)から引用した。小中学生に向けた講演をまとめた本で、ふりがなも多く読みやすくしてある。

 国全体が軍事力に酔っぱらうと、自国の軍備増強が、相手国の軍備増強を招くという単純な想像すらできなくなる。日本もそうなりつつある、とダニーさんは指摘する。

 ダニーさんの人生を簡潔にまとめた絵本も今年の8月に出版された。『ダニーさんのちゃぶだい』(作―なるかわしんご、イマジネイション・プラス)では、戦争が日常であった国で生まれ、今は日本でまるいちゃぶ台を作るダニーさんの思いが優しい色使いで描かれている。

 辛うじて今のところ日本では戦争が非日常≠ナちゃぶ台が日常≠セ。戦争が日常になってはいけない。(R)

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