2025年11月21日 1896号
【「身を切る改革」が聞いてあきれる/維新・藤田の税金還流疑惑/「自維連立」の危うさを証明】
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高市政権の連立相手となった日本維新の会に重大疑惑が浮上した。藤田文武共同代表の「公設秘書への税金還流疑惑」である。維新はこれまでも政治とカネをめぐる不祥事をくりかえしてきた。連中が売りにする「身を切る改革」は世間を欺く大嘘なのだ。
「身内」企業に発注
日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」日曜版が報じた維新藤田の「税金還流疑惑」。その構図をかいつまんで説明しよう。
藤田は政治資金収支報告書などによると、2017年6月から2024年11月にかけて、「ビラ印刷」などの名目で、自身の公設第一秘書A氏が代表を務める「株式会社リ・コネクト」(以下、リ社)に約2100万円を支払っていた。このうち9割超(約1965万円)が税金を原資とする政党交付金など公金による支出だった。
A氏は国から支給される秘書給与とは別に、リ社から年720万円の報酬を受けていた。これが税金還流にあたると疑われたわけだが、藤田は「法的にはどこから切り取っても適正」と反論した。公設第一秘書が代表を務める「身内」企業に発注した理由については「業務の速さや質で信頼が置けるから」と説明した。
本当だろうか。リ社の本店所在地はA氏の自宅であるマンションの1室だ。彼は「赤旗」の取材に対し「従業員は2人」だとし、「印刷はやっていない。印刷機もない。デザインを担当してプリントパックとかに印刷を外注している」と答えている。
印刷業者ではなく、そもそも業務の実態があるかどうかも疑わしい会社になぜ「ビラ印刷」等を発注したのか。はじめから“中抜き”ありきだったとしか考えられない。11月4日の記者会見でこの点を追及された藤田は逆上し、まともに答えなかった。
ちなみにリ社への印刷物発注は維新の大阪府総支部も行っている(2024年に「ビラ製作費」として約100万円)。同支部の代表は、維新の吉村洋文代表(大阪府知事)が務めている。共同代表の身内業者を使った「公金マネーロンダリング」の疑惑に、維新は組織として説明責任を果たす必要がある。
橋下からも批判
藤田は、「赤旗」記者が取材時に提示した名刺画像をインターネット上に公開した。記者の携帯電話番号やメールアドレスの一部は伏せたものの、記者名や所属部署、公表されていない日曜版編集部の直通電話番号はそのままの状態でアップしている。
これは政権与党の幹部による権力監視報道への威嚇行為である。「赤旗」や記者個人への嫌がらせを誘発し、批判的な報道を封じ込めようとする意図が丸見えだ。事実、藤田が名刺を公表して以降、日曜版編集部の直通番号に抗議電話がかかっているという。
維新支持者の嫌がらせと言えば、維新創設者である橋下徹が代表を務める法律事務所に対し、藤田への誹謗中傷の中止を要求する旨のメールが大量に送信されているという。橋下が出演番組やSNSで藤田批判をくり返しているからだ。
いわく「維新はこれから政権与党に入って、どんどん国民に対して、ある意味負担も伴うような改革をやっていくときに、こういうリーダーが率いる政党の言うことを聞きますか」(関西テレビの情報番組での発言。11/5放映)。
維新の松井一郎元代表は、今回の自民・維新連立合意に含まれている「社会保障改革」でも「痛みを伴う部分が出る」と明言。合意を得るためには「政治家がまず自らの身分にメスを入れて覚悟を示すというのは当然だ」(10/26産経電子版)と語っている。
ところが、藤田が苦しい言い訳と逆ギレをくり返すたびに、維新のセールスポイントである「身を切る改革」のメッキが剥げていく。このことを橋下は危惧しているのである。
「定数削減」のまやかし
藤田の進退がどうであれ、「身を切る改革」がまやかしであることに変わりはない。たとえば吉村が「政治改革のセンターピン」と主張し、「身を切る改革」の象徴と位置づける国会議員の定数削減がそうだ。
維新が主張するように、衆議院の比例定数を50議席削減するとどうなるか。毎日新聞が試算したところ、自民・維新の2党で過半数を得られる見通しであることがわかった(11/4同紙)。少数政党が大打撃を受ける一方、大政党の自民党や本拠地・大阪の小選挙区で勝利を見込める維新にとっては「身を切らない改革」になっているのだ。
藤田の記者会見を見て、「維新と自民の連立は危うすぎる」と感じた人は多いのではないか。その直観は正しい。民主主義を破壊する厚顔無恥な連中をのさばらせてはならない。(M)
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