2025年12月19日 1900号
【「台湾有事」発言でも高支持率/高市人気を支える空気の支配/撤回を求めたら「非国民」扱い】
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高市内閣が高支持率を維持している。いわゆる「台湾有事」に言及した国会答弁で日中関係の悪化を招いてもマイナスにならない。調査によっては、むしろ支持率が上がっている。これは「高市を批判してはいけない」という同調圧力によるところが大きい。
かつてない現象
国内主要報道機関8社の11月の世論調査結果が出そろった。内閣支持率は、発足直後の調査から2回目で下がるのが一般的だが、高市早苗内閣は60〜70%台の高水準を維持した。
高市が「台湾有事は存立危機事態になり得る」と国会で答弁したことへの評価はどうか。日本経済新聞の調査では「適切だ」が55%、毎日新聞でも「問題があったとは思わない」が50%にのぼった。中国政府の撤回要求に応じない姿勢を「評価する」が56%と半数を超え、「評価しない」29%を圧倒した(読売調査)。
首相が「戦争」に踏み込む発言をしても内閣支持率は高いまま―。かつてない現象がいま起きている。安倍晋三元首相が安保関連法(戦争法)を衆院で強行採決した時(2015年7月)は支持率が急落した。共同通信の調査では、前月から9・7ポイント減り、37・7%に低下した。高市内閣はその逆で、支持率は上昇し(前月より5・5ポイント増の69・9%)、不支持率が下がった(6・7ポイント減の16・5%)。
首相官邸前で高市発言に抗議する大学生は「周りに高市首相の答弁を支持する人が多い」と話す(TBS『報道特集』/11月29日放送回)。「顔を出して取材に応じ『発言撤回』と訴えるのが怖い」「こうやって自由に声をあげることが今後できなくなっていったらどうしよう」など、不安を漏らす参加者もいた。
メディアの同調圧力
「高市支持は当たり前」という空気感の醸成に大きな役割を果たしているのが、テレビ番組などにおける著名人の発言である。彼らは視聴者代表という立ち位置ゆえに、世論への浸透力は高市応援団の政治家をはるかに上回る。いくつかサンプルをみていこう。
お笑いコンビ「南海キャンディーズ」の山里亮太は、MCを務める朝の情報番組で「国内で政権を叩くようにもっていったら、むしろ相手(中国)の思うツボになってくるんじゃないかなあ。その危険の一端を担わないようにしたいと思います」と発言した。経済面での損失を大きく報道するのは、中国を利する行為だと言うのである。
元NHKアナウンサーで現在はフリーの武田真一は、同番組内で「中国は意図的に高市総理の発言をねじ曲げて、日本があたかも台湾問題に軍事介入しようとしているというふうに宣伝してるんですね」と解説した。高市発言を戦争挑発と捉えるのは中国のプロパガンダだと言いたいのだろう。
最後は落語家の立川志らくだ。コメンテーターを務める昼の情報番組で「なぜ高市さんをそこで非難するのか。日本でもそういう人がたくさんいるが、あなた方は日本人じゃないの?という気すらする」と発言した。これは明らかに「非国民」呼ばわりだ。
「非国民」は、国策(戦時体制)に協力しない者を社会的に排除するために使われた言葉である。戦前の日本で猛威を振るった「言葉の凶器」をテレビの人気者が口にした。「気分はもう戦争前夜」と言っても過言ではない。
生活の場から反撃を
高市発言に批判的な芸能人・文化人もいる。だが、彼らの発言はネットニュースで晒し者的に取り上げられ、非難の集中砲火を浴びせられる(攻撃が家族にまで及ぶ事例も)。こうした炎上事案を何度も見せつけられたらどうなるか。沈黙するか、高市支持に同調してしまうだろう。
このような空気の支配が戦争政策への批判をタブー化し、日本を戦争へと導いていったことは歴史が証明している。何としても打ち破らなくてはならない。それには高市「台湾有事」発言の危険性を暴露し、多くの人びとに理解してもらうことが不可欠だ。
熊本市の中心市街地にある陸上自衛隊駐屯地に長射程ミサイルの配備が狙われている問題で、住民の怒りが噴出している。11月9日には計画に反対する市民団体の呼びかけにより、駐屯地近くの健軍商店街で反対集会が行われた。
リレートークでは、地元小学校のPTA会長や町内会の役員、高校生らがマイクを握り、ミサイル配備に反対する自分の思いを訴えた。「保守王国」と言われる熊本市で軍拡に反対する集会が成功した背景には、地域の協力とそれを引き出した市民の取り組みがあった(4〜5面記事参照)。
こうした闘いに学び、戦争の犠牲になるのは民衆であることを広く訴えていかねばならない。 (M)
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