2025年12月19日 1900号

【「声を上げることは、今を生きる者の責任」/つながり戦争止める/スピーキングツアー全国9会場で発信】

 11月29日〜12月7日、ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)が呼びかけた「戦争とめよう!つながり 平和をつくろう!2025スピーキングツアー」集会は、オンラインを含め9会場で900人が参加した。共同代表の田中拓真さんは「全国で進む軍事化に、黙って見過ごせないと行動し、闘えば変えられると伝えられた。徐々にだが、状況が変わってきている。先行例に学びながら、楽しく生活者として地域で戦争反対の声を上げていこう」と意義をまとめた。

生活者として見過ごせない/「祝園にミサイルより花束を」と呉羽さん/大阪市

 最終日12月7日の大阪市会場。「京都・祝園(ほうその)ミサイル弾薬庫問題を考える住民ネットワーク」と「戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク」の共同代表・呉羽(くれは)真弓さんが報告した。

 ―10月19日の祝園大集会は、町民らが日常を過ごしている身近な公園に2700人が集まり、非常にありがたかった。たくさんの人が関心を持っていることがわかり、力をもらった。

 自衛隊基地がある町で、60年にわたり受け入れてきた人もいる中、顔を出して声を上げるということが、非常に難しいことも同時に感じた。声を上げることは、今を生きる者の責任。勇ましい言葉でどんどん軍拡が進められ、危機を煽られている状況がある。隣人と争う必要は全くない。

 昨日は祝園から5`ぐらい離れている駅前で訴えた。道行く人たちは、関心を持っている人ばかりではない。その人たちに明るく訴えていくことが必要だと思っている。疑問を持ってもらうだけでよい。署名も書いてくれたら、本当にめっけもん。私たちはみんなのことを心配して声を上げているんだよ、と小学生や中学生とも対話した。それこそが大事だと思っている。ミサイルより花束を!―

 呉羽さんの講演に、▽みんなで取り組もうパレスチナ連帯(ZENKO関西)▽祝園ミサイル弾薬庫許さない(寝屋川市)▽「高市あぶないで〜」漫才と訴え(大阪市)など、地域からの元気な活動報告で応える。

 集会終了後は呉羽さんとともに「高市やめろ!戦争はイヤだ!ミサイルよりも安心できる生活第一」デモで、市内に「高市発言撤回!」の声を響かせた。


与那国島の譲れない選択/「軍備増強で島が壊れる」の新町長/滋賀

 12月3日、滋賀集会のゲストスピーカーは台湾に最も近い与那国島在住の山田和幸さん。テーマは「与那国島の譲れない選択」だ。

 まず人口1638人の島の8月町長選を紹介。「暮らし続けられる島をつくろう」「これ以上の軍備増強は島が壊れる」と公約を掲げた上地町長が当選し、現職町長が落選した。与那国の選挙は「地縁・血縁選挙」で票は固められている。現職が落選したのは島では初めて。山田さんは「初めての事件」と表現する。

 「『初の事件』が起こった背景には、島民の切羽詰まった環境がある。島で唯一の特別養護施設の閉鎖、薬剤師の撤退、来年3月には診療所への常勤医師の派遣停止、米農家は今や1軒で島の根幹=第一次産業の衰退、町役場職員の定員割れで行政機能の崩壊などがある。島民の下からの努力もあって、初の公開討論会には100名以上が集まり、候補者の主張や姿勢をじかに見る貴重な機会もできた」と強調した。

 「島に配属された自衛隊員と家族300人も闘う覚悟≠求める現職町長の姿に疑問と戸惑いを感じ、強いストレスや最前線に押し出される苦悩があり、自衛隊関係者が現職を必ずしも支持しなかったと思う」

 島民たちの「譲れない選択」とは暮らし続けられる島づくりであることと報告し、共感を呼んだ。

 集会では、パレスチナ国家承認を求める意見書請願や地域に広げたAFZ(アパルトヘイトフリーゾーン)運動、中川大津市議からの「軍拡と増税は生活を切り縮め、地方自治体の国民生活関連予算をそぎ落とす。許さない運動を皆さんとともに」とのアピールも受けた。与那国と世界、そして地域をむすぶ連帯の取り組みが共有された。


基地「強靭化」進む熊本・健軍駐屯地/ミサイル配備反対 立ち上がる住民/平和の実現は命懸けの外交で/東京・品川区

 12月2日東京・品川区集会のゲストは、スピーキングツアー初登場の「平和を求め軍拡を許さない女たちの会・熊本」事務局長・海北(かいきた)由希子さん。

 熊本市東区の陸上自衛隊健軍駐屯地で進む地下司令部化・ミサイル配備の動きを詳細に報告した。「私たちは九州にいながら、沖縄の基地負担の問題は他人事だったと今になって思う。なぜなら自分たちが今そうなっているから」と切り出し、「健軍駐屯地の西部方面隊司令部が今年度355億円を計上して地下化・強靭化される。その目的は安保3文書に『国土が戦場となることも想定し、有事においても容易に作戦能力を喪失しないよう、粘り強く戦う態勢を確保するため』とある。電磁パルス対策も実施され、核シェルター化することになる」と指摘。

 「12(ひとにい)式地対艦ミサイル能力向上型が今年度中に配備される。半径2`圏内に保育施設が29か所、小中高大学が28校。人びとが普通に暮らしている。具志堅隆松さんは『沖縄よりひどい』と言っていた」と明かし、「北熊本駐屯地の第42即応機動連隊は有事の際、一番に最前線に送られる。高市政権になったとき、家族は泣いていた。私たちは隊員一人ひとりの顔を思い浮かべ、戦争になってほしくないと心から願う。『自衛隊出て行け』ではなく『米軍の言いなりにならないで。あなたの命を守ることが私の命を守ること』と呼びかけている」と話した。

 集会参加者の大きな関心を呼んだのが、健軍駐屯地近くの商店街で「ストップ!長射程ミサイル」を掲げて1200人が集った11月9日のデモの報告。「今まで声を上げたことがない町内会長や商店会長、PTA会長らが、溜まっていた思いをリレートーク。準備段階では住民たち自身が意見を出し合い、市民団体は側面支援に徹した。住民たちはのり始めると、お祭りのようにどんどん広がった」

 海北さんは「平和は軍事力ではなく、命を懸けるなら命懸けの外交によってこそ実現できる」と講演を締めくくった。

 集会ではこの後、品川区・横浜市・大田区での平和な地域をつくる取り組みが報告され、「月桃の花」歌舞団の歌声で幕を閉じた。

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