2026年01月02日 1902号
【高市が急ぐスパイ防止法/実は国家スパイ推進計画/戦争遂行へ異論の封殺が狙い】
|
高市早苗首相が「スパイ防止法」の制定に前のめりだ。「外国勢力から日本を守るために必要」というが、「守る」という言葉にだまされてはならない。政権の狙いは、市民を監視対象とした「スパイ機関の創設」にある。戦争国家づくりと一体の策動なのだ。
制定に前のめり
スパイ防止法の制定は高市首相の持論である。自民党の治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会長だった25年5月には、当時の石破茂首相に「治安力の強化」を提言。「諸外国と同水準のスパイ防止法の導入に向けた検討も推進すべきである」と述べていた。
首相就任後、動きを本格化させる。日本維新の会と結んだ連立政権合意書に、関連法制の検討開始(2025年中)と速やかな法案成立を明記。自民党内では小林鷹之政調会長を本部長とする「インテリジェンス戦略本部」を設置した。
高市政権にすり寄る勢力も「バスに乗り遅れるな」的な競争を開始した。維新は自民に先駆けて議論を加速させ、来年1月にも政府にスパイ防止法制定の提言を出す方針だ。国民民主党と参政党はそれぞれ11月下旬に、独自のスパイ防止関連法を国会に提出した。
排外主義や中国の脅威をあおる風潮が高まっている今、「外国勢力のスパイ活動を取り締まる」といった主張はウケが良い。ネットの反応を見ると「反対する奴はスパイ。中国共産党の手先だ」といった言説があふれかえっている。
しかし高市らによるスパイ防止法制定の本質的な狙いは、国家としてスパイ活動を行えるような法的制度の枠組みをつくることにある。戦争政策に反対する声を抑え込むための治安体制強化の一環であり、それを担う「スパイ組織=謀略機関」の創設計画なのだ。
日本版CIA構想
どういうことか。前述の自民戦略本部は、検討の柱として▽司令塔機能の強化▽対外情報収集能力の強化▽外国からの干渉を防止する体制の構築―を提示。各省庁の情報を集約する「国家情報会議」や「国家情報局」の設置を最優先事項として議論を進めることを確認している。
「国家情報会議」とは、政府が情報収集・分析機能強化のために新設する機関のことで、首相が議長としてトップを務める。「国家情報局」はその事務局を担う。外務省、防衛省、警察庁、公安調査庁などの情報部門が持つ情報がこの機関を通して首相官邸に集約される。
要するに、首相直轄の情報収集・分析機関を設置し、すべての市民を権力の監視下に置くということだ。その狙いが戦争政策に反対する者の発見・排除にあることは言うまでもない。治安維持法や軍機保護法が戦争遂行の武器に使われた戦前の歴史と同じことだ。
検討項目に「対外情報収集能力の強化」があがっていることにも注目したい。自民と維新の連立合意文書は、「独立した対外情報庁(仮称)」と「情報要員養成機関」を2027年度末までに創設するとしている。海外でのスパイ活動や謀略工作を専門とする機関、すなわち米中央情報局(CIA)や英秘密情報局(MI6)の日本版を立ち上げるということだ。
敵対視する国を念頭に情報活動を強化すれば、その矛先は自国の市民にも向けられる。政府に批判的な国内の団体・個人と「外国勢力」との関係の有無を調査することになるからだ。市民団体でも、海外の団体と連携した取り組みをしていると外国勢力と通じているとみなされ、監視の対象になるだろう。
戦争政策に反対する言論や運動に「スパイ」「利敵行為」のレッテルを貼り、無力化する―。高市政権がやろうとしているのはこういうことなのだ。
民主主義の基盤を壊す
「極左の考えを持った人たちが社会の中枢に入っている。極端な思想の人たちは辞めてもらわないといけない。これを洗い出すのがスパイ防止法だ」
参政党の神谷宗幣代表は、参院選中の街頭演説(7月14日)でこんなことを述べていた。後に「思想統制ではない」と釈明したが、戦争勢力が考えるスパイ防止法の使いみちをあけすけに語った発言といえる。
荻野富士夫・小樽商科大学名誉教授は、戦前のスパイ防止法制である軍機保護法を例をあげ、異論を封殺する萎縮効果を強調する。「摘発されてしまうことを恐れ、戦争や軍事に関することは見ないでおこう/触れないでおこう/話さないでおこうという姿勢が広がりました。軍機保護法は、有権者が現実を直視しなくなる結果も生みだしたのです」(10/10毎日)。
スパイ防止法は民主主義の崩壊を招き、戦争への道を開く悪法である。断固反対し、制定を阻止しなければならない。 (M)
 |
|