2026年01月23日 1904号
【2026年度政府予算案 軍事費9兆円超/「南西シフト」強化急ピッチの自衛隊/対中国軍事戦略の「主役」めざす】
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トランプ政権は国家安全保障戦略で「西半球優先」を打ち出した。日本の安保関連(軍事)3文書は改定作業中だが、米戦略に呼応し自衛隊の新たなステップアップの機会と捉えている。2026年度予算案に過去最高額9兆円の予算を計上した政府・防衛省。対中国軍事戦略の主役の座を得ようとしているのだ。
師団格上げの狙い
政府・防衛省は26政府予算案に軍事費9兆353億円(SACO《沖縄に関する特別行動委員会》関係経費・米軍再編経費含む)を計上した。当初予算では初の9兆円超えだ。重点にあげる無人兵器、敵基地攻撃ミサイルの購入・生産などに1兆7600億円。12式地対艦ミサイルの部隊配備を進め、極超音速誘導弾の量産に着手する。
武器・弾薬を揃えることの他、自衛隊組織の改編強化にも踏み込む。注目すべきは那覇駐屯地の第15旅団を第15師団に格上げすることだ。普通科連隊を新設し、偵察隊に機動戦闘車を配備し武装強化をはかる。900人余りを増員し、約3千人の部隊とする。他の「師団」が6千人〜9千人の陣容であることを見れば、今後、規模拡大が想定される。
南西諸島を軍事拠点化する自衛隊「南西シフト」。第15旅団の「師団」化はその一環であり、目的の一つに先島(宮古島、石垣島、与那国島)の駐屯部隊との連携強化がある。沖縄島の第7地対艦ミサイル連隊が先島のミサイル部隊の司令塔になっていることに合わせたものだ。南西諸島全体を「前線基地」から「統合防衛拠点」へと強化する。
両部隊は西部方面隊に属し、熊本の健軍駐屯地にある西部方面総監の指揮下で九州・沖縄が一体として、対中国軍事行動をとる。
この西部方面隊総監部は25年度から「強靭(きょうじん)化」工事が進んでいる。26年度も地下化や電磁パルス対策、弾薬庫新設工事が継続する。かさねて射程1千`bの12式地対艦ミサイル配備のため、1770億円が26予算案に計上された。
敵国の反撃で周辺住宅地が破壊されても、司令機能を維持し戦闘を続けようというのだ。

トランプ戦略に呼応
自衛隊「南西シフト」は米中経済戦争を背景に、「日米同盟の強化」として進められてきた。そして今、トランプが書き換えた国家安全保障戦略(NSS)で何が変わろうとしているのか。
NSSは次のように書いている。「トランプ大統領が日本と韓国に対し負担増を強く要求していることを踏まえ、我々はこれらの国々に防衛費の増額を促す必要がある。その焦点は、敵対勢力を抑止し第一列島線を防衛するために必要な能力(新たな能力を含む)に置かれるべきだ」
第一列島線とは韓国から、九州・南西諸島、台湾、フィリピンをつなぐ線であり、中国軍との攻防ラインである。つまり、日本に対し、もっと軍事費を増やして「南西シフト」を強化せよと要求している。
米海兵隊は、中国軍の阻止線に前進基地を置いて制海権を確保する「遠征前進基地作戦」を採用している。このため、小規模で機動力を優先する「海兵沿岸連隊」に改組し、自衛隊は海兵沿岸連隊の後方支援の位置づけになっている。だがトランプ政権は自衛隊に前に出て戦えと言っているのだ。
自衛隊の「南西シフト」は16年与那国島への陸上自衛隊駐屯地設置で表面化した。22年に岸田政権下で作成した軍事3文書に先立つ動きだった。文書で定式化する前に現場は動いていた。新たな3文書は年末の閣議決定を目標としているが、予算化は28年度からとなる。だが、政府・防衛省が足踏みをすることはない。
第15旅団の「師団」化は現行3文書で方針化されているが、新3文書では「新たな攻撃力の保持」も含め、部隊の増強方針が打ち出されるだろう。現場は先を見越して動いている。
辺野古に固執する政府
こうした「南西シフト」の動きとはほとんど無関係に行われているのが、名護市辺野古新基地建設だ。
1996年普天間基地返還合意から30年。辺野古X字滑走路案を日米政府が合意してから20年。当時「海兵隊航空戦力の維持」と位置づけられた辺野古移転は海兵隊の戦略変更により、その軍事的必要性は失われている。日本政府は「普天間基地返還の解決策」と固執しているが、日米共同声明(25年2月)からは「唯一の解決策」の表現が消えた。
防衛省は昨年11月、大浦湾側への土砂投入を始めたが、軟弱地盤の対策工事はほとんど進んでいない。10年近く前にその存在がわかっていた軟弱地盤に対し、いまだに有効な工法が見つからないということだ。にもかかわらず26予算案では3373億円の工事費が計上されている。25予算1919億円を大きく上回る。
工事費累計は8千億円を超え、政府公表の総工事費9300億円の約9割に達する。だが、工事の進捗(しんちょく)率は16%。どれだけカネをかけても完成はおぼつかない。
辺野古新基地反対の闘いは、日米軍事同盟による軍拡政策に対する闘いだ。新基地建設を断念させることは誤った政治≠正すことにつながる。
辺野古周辺住民30人が原告となり、国土交通大臣が「代執行」した埋め立て設計変更承認の取り消しを求めた裁判が行われている。沖縄県と国との訴訟では、「代執行」の是非について実質審理は行われなかった。住民訴訟で初めて「代執行」の不当性について判断が示される。これまで政府が捻じ曲げてきた法解釈(行政不服審査法の私人なりすまし、地方自治法の国地方対等関係の破壊など)を正すことにもなる。地元の名護市長選挙が1月25日に行われる(18日告示)。「オール沖縄」が支援し、基地建設に反対しない現職に挑む翁長久美子前市議予定候補の当選が何としても必要だ。

戦争のリアルにノー
軍拡路線とどう闘うのか。辺野古新基地反対の粘り強い闘いが、全国各地の反基地の闘いをつないでいる。各地に増設・配備される弾薬庫やミサイルに対する住民の危機感はあらたな反基地の闘いを生み出している。「沖縄・西日本ネットワーク」の結成はその大きな成果だ。
健軍駐屯地では、近くの商店街で1200人の市民が長射程ミサイル配備に抗議する集会を持った。古くから自衛隊と共存し、身内に自衛隊関係者も多いそんな街で、町内会長や商店主、元自衛官などがマイクで訴えた。
京都府精華町陸自祝園(ほうその)弾薬庫の増設に反対する地域のネットワークができた。長射程ミサイル配備に対する危機感が拡がり、弾薬庫増設反対を訴えるメンバーを町議会議員に当選させた。
ウクライナ、パレスチナそしてベネズエラなど戦争へのハードルがどんどん低くなっている。高市首相が「台湾有事」への武力介入を正当化する発言をし、戦争が他人事ではなくなっている。軍事費を削れ。軍備を縮小しろ。戦争を遠ざける道はそこからだ。
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