2026年02月06日 1906号
【「人気投票」で狙う国会制圧/「白紙委任状」求める高市/「私か、中国か」の構図を演出】
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早くも中盤を迎えた衆議院議員総選挙。「真冬の超短期決戦」を仕掛けた高市早苗首相は、自らの人気を頼みに国会を高市カラーに塗りつぶすことを狙っている。戦争と財政破綻をもたらす大軍拡路線を突き進む高市に「白紙委任状」を渡してはならない。
政策論争を回避
日本国憲法は衆議院の解散から40日以内に総選挙を行わねばならないと定めている(第54条)。解散から投開票日までの日数は近年短くなる傾向にあるが、今回は戦後最短の16日間しかない。自らの人気投票に持ち込みたい高市は、政策論争を避け、頼みの支持率が下がらないうちに選挙を終わらせたいのだ。
「高市早苗が内閣総理大臣でよいのかどうか、主権者たる国民の皆様に決めていただく」。1月19日の記者会見で高市は解散理由をこう語った。自分に「国家運営」を託すのかどうか、「皆様に直接ご判断をいただきたい」とも言った。
高市はこの会見で「国論を二分するような大胆な政策」という表現を何度も用いている。だが、それが具体的に何を示すのかについては最後まで明かさなかった。自民党内からは「いかに各論に入らず、『大きな雰囲気』で議論するか」しかないとの声すら出ているという(1/23毎日)。
何をしたいのか明らかにせず、「高市総理かそれ以外か」と迫る手法は、国家運営の白紙委任状を有権者に要求しているのと同じことだ。かつてドイツのヒトラー政権は「全権委任法」を成立させて議会政治を空洞化し、独裁を可能にした。国会答弁に難がある高市も、そうした願望に取り憑かれているのではないか。
高市は新人議員だった1994年、当時の自民党東京都支部連合会広報部長が執筆したナチス礼賛本『ヒトラー選挙戦略』に推薦文を寄せたことがある。「ナチスの手口」を褒めたたえていた高市が独裁的な権限を欲しがるのは、ある意味当然のことであった。
反中国感情を味方に
高市応援団の作家・門田隆将は、この衆院選を「媚中勢力成敗選挙」と位置づけている。「若者の投票率が低ければ、日本は再び媚中勢力に支配される」「組織票の割合が高まり、中国の思い通りの結果になる」と述べ、ネット世論に決起を呼びかけた。
これはネトウヨ作家の妄想ではない。高市本人も世論の反中国感情を取り込むことを意識している。1月19日の会見では、ハイテク製品に欠かせないレアアース(希土類)の対日輸出規制を念頭に、「自国の主張に他国を屈服させようとする経済的威圧の動きもみられます」と述べ、中国政府を暗に批判した。
いかにも被害者ぶった言い分だ。「台湾有事」が集団的自衛権発動の対象になるとした(自衛隊が中国軍を相手に武力を行使するということ)自身の国会答弁が中国との関係を悪化させたことは無視している。そもそも「自国の主張に他国を屈服させようとする経済的威圧」の代表例は、トランプ米政権の圧力的な関税措置だが、これについては何も言わない。
このように、高市の主張は突っ込みどころ満載なのだが、世論の反応は鈍い。「中国に屈するな」的な感情論で高市を応援する声がはるかに上回っている。
選ぶな、キケン
時事通信の1月世論調査(1/9〜1/12実施)によると、高市の中国に対する姿勢を「評価する」は44・4%で、「評価しない」の21・8%を大きく上回った。「レアアースの対日輸出規制」について設問で触れていてもこの結果なのだ。
毎日新聞の12月世論調査(12/20〜12/21実施)をみると、高市の台湾有事発言を「撤回する必要はない」67%に対し、「撤回すべきだ」は11%にとどまった。内閣不支持層でも「必要はない」が40%で「撤回すべき」34%を上回った。
「撤回する必要はない」を選んだ理由を自由に書いてもらったところ、「発言内容は正しい」といった意見が多かった。「中国側がむしろ日本や台湾を挑発している」「撤回すれば相手の思うつぼ」といった中国批判も多く、さらには「中国の顔色をうかがう政治は終わりに来ていると思う」といった意見もあった。
かつて日本が中国侵略に踏み込んでいった時代の空気を思わせる危険な兆候だ。高市は排外主義的なナショナリズムをを煽り、それを自らの追い風にしようとしているのである。
中国との関係悪化は日本経済を奈落の底に突き落としかねない。大軍拡路線は人びとに一層の負担を強いたあげく、財政を破綻させる。そして日本、台湾、中国の人びとを戦禍に巻き込む。民衆にとって良いことは何もないのだ。あまりに危険な高市政権の存続を許すか否か――総選挙の争点はこれに尽きる。(M)
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