2026年02月06日 1906号

【読書室/自治体は何のためにあるのか ―〈地域活性化〉を問い直す/今井照著 岩波新書 940円(税込1034円)/当たり前の暮らしやすさをつくる】

 福島県国見町は、町に全く必要のない高規格救急車を開発製造し周辺自治体に貸し出すリース事業に取り組む計画を立てた。しかし、この事業には町と契約した「コンサルタント」の関連企業からの「企業版ふるさと納税」が資金として使われ、関連企業の子会社から救急車を購入するもの。企業の税逃れともうけのために仕組まれたものだった。

 これは、「地方創生」の名で地域活性化=「稼ぐ」ことをあおられた象徴的な事例だ。「地域創生」とは安倍政権下でつくられた造語。「成長戦略」に「地方」を位置づけ「稼げる自治体」政策を推奨した。その結果、国見町のように利権を求める「コンサルタント」や企業が地域の実情を無視した事業を自治体に押しつけることになったのだ。

 本書は、地方分権の流れは、2000年の「地方分権改革法」で自治体と国の関係が対等≠ノ位置づけられた時点がピークだったとする。その後は地方分権は後退し、「平成の大合併」をはじめ国が推奨する政策を、交付金や補助金を餌に地方に押しつけ、統制を強めてきた。2024年の地方自治法の改悪では、自治体行政システムを国の仕様書に合わせる「最適化」や国の自治体への「指示権」まで盛り込まれた。

 著者は、こうした国の統制が強まれば強まるほど、人びとの暮らしを維持し暮らしやすくする地方自治本来の役割を果たせなくなると指摘する。国と対等な「地方分権」を強化することで、住民の実情、要求に基づく地方独自の行政を行うことができる。それこそ「国家主権」ではない「国民主権」の憲法原理であり、地方自治のめざすべき姿だと主張している。 (N)
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