2026年03月06日 1910号
【2026年首相施政方針演説を「高市推し」との対話の糸口に/「未来への挑戦」って何ですか?】
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高市早苗首相初めての施政方針演説(2/20)。一貫して、経済投資と戦争国家づくりだ。少数与党だった臨時国会時の所信表明(2025年10月)に比べ、強気の表現が目立つ。圧倒的多数の与党が国会審議を軽んじ、独断政治≠行わないよう、世論を巻き起こそう。施政方針のフレーズをもとに「高市推し」の人びととの対話を考えてみた。
高市首相の「物価上昇に負けない賃金上昇を実現」の政策に期待しますか。
ぜひ実現したいですね。どう実現するのか、施政方針ではこう言っています。企業の事業収益が上がり、税収が自然増に向かう「強い経済」をつくり、この好循環を生みだし、日本経済のパイを大きくするとともに、「物価上昇に負けない賃金上昇を実現します」。
高市政権がすることは企業の成長のために税金を使うことです。「成長のスイッチを押して(4回続く)押しまくる」と力を込めました。高市首相の経済政策「責任ある積極財政」の「本丸」です。
どうでしょう。賃金が上がらないのは「経済成長」が足りないから、ですか。大企業は利益を上げ、内部留保を積み上げています。労働生産性(労働者一人当たりの生産力)は向上しています。なのに賃金が上がらなかったのです。
原因はこうです。2002年、大企業の集まり日本経済団体連合会(経団連)は「春闘の終焉(しゅうえん)」を宣言し、日本労働組合総連合会(連合)は翌年からベースアップの統一要求をやめました。中国企業との市場争いが始まったころです。大企業と御用組合が賃金を抑えることで国際競争力を高めようとしました。その結果、資本が儲け、労働者が貧困になったのです。
賃上げには、労働者が作り出した「利益」を資本から取り戻すことが必要です。資本に譲歩を迫るストライキなどの闘いが不可欠です。
政府が主導できる賃上げもあります。最低賃金や国家公務員の賃金、医療・介護の報酬などです。物価高対策では直接給付も有効です。高市首相には真っ先に掲げてほしい政策です。
ところが高市首相の口から出てくるのは企業投資ばかり。労働者ではなく資本のための政権だと言わざるを得ません。
高市首相の「日本列島を、強く豊かに」は地方もよくなる希望を感じますか。
施政方針では「農山漁村・中山間地地域をはじめ47都道府県のどこに住んでも、安全に生活することができ、必要な医療・福祉や質の高い教育を受けることができ、働く場所がある」。これが「高市内閣がめざす日本の姿」と言っています。
そんな日本であることを願っています。では、どう実現するのでしょう。「大胆な投資促進策と産業用地を含めたインフラ整備とを一体的に講じます」。企業誘致をするということです。
実例があります。北海道には国策企業ラピダス、熊本には台湾企業TSMCの半導体製造工場ができました。多額の税金が投入されていますが、半導体需要の先行きは政府の見通しとは違っているようです。
TSMCの第2工場の建設がストップ。第1工場も採算がとれないとの報道もあります。工場周辺では地価や家賃の高騰で飲食店や小売店などが撤退するなど、地域経済は振り回されています。地下水の大量くみ上げによる環境破壊なども心配されています。
2例とも高市政権の誘致ではないですが発想は同じです。「圧倒的に足りないのは、資本投入量、すなわち国内投資です」と語る高市首相の頭にはグローバル資本のことしかありません。
地域の医療・福祉、教育を充実するには、それぞれの分野に適切に国費を出す政策が必要ではないでしょうか。
高市首相の国際秩序が不安定。「強い外交・安全保障の確立」は当然ですか。
安全な暮らし。心から願わずにはいられません。高市首相は、「日米同盟がその基軸」と言います。日米間だけでなく世界中の人びととの友好関係を強めたいですね。ところが、トランプ大統領はベネズエラに軍隊を送り大統領を誘拐しました。ガザの子どもや女性たちを殺し街を破壊するイスラエルに武器支援をしています。国際法違反です。
高市首相には、予定されているトランプ大統領との会談で、国際法を守るよう説得する「強い外交」を見せてほしいですね。
安全保障では安保「3文書」を前倒しで改定し「主体的に防衛力の抜本的強化を進める」と言います。ますます軍事費が膨らんでいきそうです。軍事費を対GDP比5%とすると年間約30兆円。税収の3分の1にもなります。4人家族で年100万円の負担になります。それだけの予算を使う必要はあるのでしょうか。
高市首相は「我が国にとって望ましい安全保障環境を自ら創出していく」と言います。どういうことか。どこの国にも武器輸出ができるようにして、日本の軍需産業を成長させる。起業や技術開発、新市場開拓にチャレンジする―つまり、安全保障とは兵器産業を育てることです。戦争で商売繁盛。誰かが死んだら儲かる「死の商人」など願い下げです。

高市首相の「外国からの不当な干渉を防止する制度」は必要ですか。
外国勢力による選挙介入や産業スパイなどによる機密情報の不当な盗み出しなど、防ぐ必要はあります。とはいえ、高市首相はどんな制度をつくるつもりなのか。施政方針では言及しませんでしたが、いわゆるスパイ防止法のことでしょう。
スパイを捕まえるにはどうすればよいか。スパイは目立たぬように、社会に溶け込んでいるとすると、誰彼かまわずスパイではないかと疑う所から始めることになります。つまり、すべての市民が常に監視対象になるわけです。
「やましいことはない」。それなら監視されても大丈夫でしょうか。大川原化工機事件を思い出してください。噴霧乾燥器を中国へ輸出した正当な取り引きが、犯罪にされてしまいました。「経済安保」事件の典型例としたかったことが、検察が犯罪をでっち上げた動機です。つまり、政権の都合で「スパイ」にされるわけです。怖い社会になると思いませんか。
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高市は「挑戦しない国に未来はない」と力説する。「憲法改正」への決意を述べた後に出てくるフレーズだ。明らかに、改憲への挑戦を意味しているのだが、あえて目的語をはずしている。「守るだけの政治に希望は生まれない」との決め言葉も同じだ。「何を」守るのか、聞く方の問題意識次第でなんとでもとれる。「高市推し」は人物への注目度を高めた。「現状を変えたい」という願いや期待をすくいとる高市ワードに込められた危険性を暴き、政治への関心と批判を広げていこう。


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