2026年03月06日 1910号
【定額働かせ放題の裁量労働制拡大/高市が「押しまくる」のは/資本の搾取強化スイッチだ】
|
2月20日、高市首相は施政方針演説で労働政策に関連して次のように述べた。狙いをあけすけに語っている主な部分を見てみよう。
「働き方改革の総点検においてお聞きした働く方々のお声を踏まえ、裁量労働制の見直し、テレワークなどの柔軟な働き方の拡大に向けた検討を進めます。とにかく成長のスイッチを押して、押して、押して、押して、押しまくってまいります。…『スタートアップ育成5か年計画』を強化し、先端技術の社会実装を加速させます。…そのため、規制改革、人材育成、総合支援策を講じます」
「働きたい改革」の正体
高市は昨年10月の就任直後に「労働時間規制の見直し」を指示した。その際、「働きたいのに働けない」という人びとのニーズに応えるためとして、現行の残業規制などが「オーバーコンプライアンス(過剰な法令遵守)」になっていると指摘。上野厚労相への指示書には「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和」の検討が含まれていた。
高市は、自民党の衆院選公約「『働きたい改革』を推進」が、資本の都合による働かせ放題への「裁量労働制の見直し、拡大」であることを示した。総裁就任時の「働いて、働いて」は、自民党議員にだけではなく、やはりすべての労働者に向けられたものだった。
また、スタートアップ(起業)育成に関しても、内閣府の規制改革推進会議などは「スタートアップに限定した裁量労働制の活用拡大」を求めている。対象業務の拡大や、導入手続きの緩和が狙われている。
残業規制を攻撃
こうした労働規制緩和の動きに合わせ経団連の「2026年版経営労働政策特別委員会報告」は、グローバル資本の欲望を露骨に表明した。報告は、「『働き方改革=長時間労働の是正』との考え方にウェートを置き『時間外労働の削減』に資する取り組みに企業が過度に注力したことが、付加価値の維持・増大にマイナスの影響をもたらし、日本の労働生産性の国際的低迷を招いた可能性がある」と残業規制を攻撃する。
前年版では「労働時間については…週60時間以上という水準は、健康被害が発生するリスクが高まるとされる月80時間以上の時間外労働となる可能性がある」と、建前ではあれ長時間労働の防止を強調していた。高市政権下の26年版では、これとは打って変わって長時間労働で搾取を強化することを公然と表明した。
裁量労働制は過労死への道
裁量労働制は、1987年の労働基準法改定によって導入された。当初は対象5業務が行政通達で例示列挙されていたが、「業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、具体的な指示をしないこと」が要件とされた。93年の改定で、法改正を経ることなく労働大臣が適用対象業務を拡大できるようになった。さらに98年には、労使委員会決議等を要件に企画業務型裁量労働制の導入が可能となる。
裁量労働制に関して、複数の過労死事例や裁判事例、行政機関による是正勧告事例などが多くある。濫用(らんよう)事例では、最低賃金レベルの固定給しか支給されていないものもある。
当事者たちは、会社から「うちは裁量労働制で、労基署も受理しているから、残業代は出さなくても問題ない」と説明されると「そうなんだ」と思い込まされ、その実害はなかなか表に出てこない。多重下請け構造の末端にいるシステムエンジニアなどには、きわめて過重なノルマが課され、裁量性がないにもかかわらず裁量労働制が採用されている事例が多い。
現状でも裁量労働制の実態は「定額働かせ放題」だ。高市政権や経団連の狙いは、裁量のない一般労働者へのこの働かせ放題=長時間労働の拡大である。


* * *
衆院選当選者への日経新聞アンケートで「もっと働ける規制緩和を支持する」賛成は6割という危険な状況だ。裁量労働制の危険性を暴き、過労死家族の会などとともに市民・労働者が声を上げ、「命を守る闘い」を社会的に広げよう。
 |
|