2026年03月13日 1911号

【「日本国国章損壊罪」の制定へ/高市自民と参政党が狙う/戦争国家づくりと排外主義】

 高市首相が「必ず実現」と公言する「日本国国章(国旗)損壊罪」制定。1月段階の政府提出法案には含まれなかったが、すでに参政党が法案を提出し予断は許されない。「日の丸・君が代」強制と闘い続けてきた「Democracy for Teachers and Children 〜『君が代』調教やめて〜(D-TaC)」の松田幹雄さんがその危険性に警鐘を鳴らす。

「侮辱」行為を処罰

 昨年10月の自民党と日本維新の会の連立合意書に盛り込まれた「日本国国章損壊罪」が今国会の重要課題の一つとなる。今、改めて持ち出してきた目的は何か。それは、スパイ防止法制定などと一体で、戦争づくり国家への統制と排外主義扇動の材料とすることだ。

 現行法でも、官公署や他人が使用する国旗や国章を損壊する行為は、器物損壊罪、公務執行妨害罪の対象となりえた。国章損壊罪を新設することで、これまで対象にならなかった私的な行為も処罰対象になる。

 参政党案は「日本国に対して侮辱を加える目的で、国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する」とする。罰則によって国旗・国章が象徴する日本国家の権威を傷つけることを許さないというものだ。「侮辱を加える目的」というあいまいな表現で、また、損壊や汚損も恣意的な運用・通報等を可能とし、こと国旗に関連させれば、芸術表現、ポスター、画像などにいくらでも拡大適用の危険がある。

 これは、表現の自由や思想・良心の自由より、国家の権威保護が優先されることを意味する。国旗に象徴される国家・政府とその行為への批判を萎縮させ、さらには批判自体の禁止という狙いが浮かび上がる。

学校の「日の丸」強制の今

 今、高市政権が加速しようとする戦争国家づくりは、大日本帝国憲法下の戦前の体制をモデルとしている。

 侵略戦争への動員は、万世一系の天皇統治と天皇の神聖性を大日本帝国憲法に規定し、学校教育・儀式を通して子どもに徹底して刷り込むことで進んだ。「日の丸」を壇上正面に貼りだし「君が代」を斉唱する儀礼は、日中戦争から太平洋戦争の時期につくられた。「日の丸・君が代」が象徴する国家への忠誠を強要し一切の批判を封じたのだ。

 天皇制軍国主義を否定したはずの戦後でも、1989年学習指導要領改訂以降、卒・入学式への「日の丸」「君が代」義務付けが行われ、99年「国旗国歌法」制定などを通して、戦前と同様の「日の丸・君が代」卒業式となってきている。

 とはいえ、「日の丸」掲揚「君が代」斉唱の位置づけは建前上「国際化の時代に生きる日本人として国際的儀礼を身につける」であり、なお脆弱(ぜいじゃく)なものだ。大阪市教育委員会も、私たちD-TaCとの協議で「子どもの権利条約はすべての教育活動で考慮すべき」と答えざるを得ない。子どもたちを戦争を担う兵士に育成する教育からすれば、いまだ大きな距離がある。「有事」の国民動員とそのための教育を推進したい戦争勢力にとって、国家尊重義務から忠誠強要につながる国章損壊罪は、その突破口だ。

排外主義扇動への道

 参政党は昨年10月、日本国国章損壊罪を盛り込んだ刑法改定案を国会提出した。神谷代表は、街頭演説の際に市民が「×(バツ)」印を付けた日の丸を掲げて抗議した事例を挙げ、「国家に対する冒とくにもなるから早く法制化すべきだ」と法案提出の理由とした。

 「日本人ファースト」が看板の参政党だけでなく、高市首相も「(損壊罪は)日本の名誉を守る上で必要」と強調する。ここには、日本政府による軍事侵略や支配統制への批判としての表現を国旗損壊による日本国の侮辱≠ニし処罰対象にすることで、政府に抗う者や外国人などを排斥する狙いがある。排外主義をさらに広げようとの動きに警鐘を鳴らすことが必要だ。

 高市首相の「盟友」トランプ米大統領は昨年8月、「米国旗を焼却・冒とくした者の訴追を求める大統領令」に署名した。「国旗を燃やせば禁固1年だ」と述べ、在米外国人にはビザ(査証)や永住許可等の禁止・取り消しを求めている。

 まさに日本国国章損壊罪制定の行きつく先だ。差別と排外主義の扇動に決して道を開いてはならない。



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