2026年03月13日 1911号

【読書室/社会主義都市 ニューヨークの誕生/矢作弘 学芸出版社 2200円(税込2420円)/突然の英雄ではないマムダニ】

 世界一“Cool(クール)”な都市ニューヨーク。本書はその輝きの背後にある格差構造を歴史をさかのぼって分析し、その変革に挑む若き新市長ゾーラン・マムダニの姿と「アフォーダビリティ(暮らしやすさ)」を柱とする政策を解説する。

 イスラム教徒の父は世界的に高名な政治学者。ヒンドゥー教徒の母は国際的に評価される映画監督。ヒューマニストの両親の下で育ち、DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)に加入し様々な活動や選挙戦を闘うようになった。ヒップホップとラップを愛し、論破より傾聴の姿勢で政敵たちをも魅了するカリスマ…。著者も「調べながらマムダニに感情移入した。応援歌のつもりで書いた」と述べる。

 では、マムダニは特別な存在なのだろうか。ここ数年で、全米で社会主義や進歩派の地方首長が相次いで誕生している。若者の立候補自体が増加しており、2024年の連邦議会選挙では候補者の4分の1がミレニアルやZ世代だった。無料バスや公営の食料品店といったアフォーダブルな政策は、各都市で実践例がすでにあり、具体的に調整しながら実行していける。

 富裕層と資本を優先してきた新自由主義政策への対案としてマムダニに続く若手政治家は今後も増えるだろうと著者は予測する。

 本書には、ジェントリフィケーション(都市の富裕化・高級化現象)という言葉が頻出する。庶民が創りあげた街に、大資本が投資し商品化して地価や生活費を上昇させ、ホームレス追放運動なども伴って低収入の庶民が追い出される現象のことだ。ニューヨークはその社会現象の最前線であり、マムダニとDSAはそれと闘っている。 (R)
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