東京都と防衛庁は、九月三日に「防災」に名を借りて自衛隊を治安出動させ、首都を事実上の戒厳令下に置こうとしている。外国人を治安の対象視し、自治体の戦争協力の突破口を狙う、この暴挙に対する抗議の声を広げよう。

統幕議長が陸海空を指揮

　九月三日に予定されている東京都総合防災訓練（ビッグレスキュー東京２０００）の陣容が正式に明らかにされた。

　自衛隊は当初いわれていた四千人から七千百人に増えて、全体の実に三分の一を占める。また車両千九百五台のうち自衛隊車両が千九十台、航空機百十六機のうち自衛隊機は八十二機を占める。さらに輸送艦など自衛隊艦船五隻も参加する。

　自衛隊員七千百人というのは一個師団に相当する人数で、自治体が行う訓練としては過去に例のない規模となる。東京都としても、昨年の十六倍という異常な規模だ。

　陸上自衛隊からは、初動部隊として東部方面隊第一師団（東京）と第十二師団（群馬）が出動する。このうち第一師団は、この秋に全面開通する都営地下鉄「大江戸線」の試運転車両を使って、練馬駐屯地から都心（木場公園）に展開する。

　銀座の目抜き通りには自衛隊の装甲車が出動し、道路が完全封鎖される。地下通路で有毒ガスが発生したという想定で、化学防護車も出動する。

　白鬚西会場では、空路を利用した部隊の進出訓練（大型ヘリによる部隊や車両の輸送）が行われる。当初計画では、「偵察活動」の名目でのパラシュートによる降下訓練まで含まれていた。晴海会場（埠頭）では、海上自衛隊が輸送艦で上陸訓練を行う。篠崎会場では、警察なども含め組織をこえた「航空機の運行統制訓練」まで行われる。

　そして統合幕僚会議議長が、「統裁官」として陸海空三軍を統括・指揮する。

都民を自衛隊が統制

　本来、大規模災害が起こった初期の段階で必要なのは、消火活動と倒壊した建物などの下敷きになっている人びとを短時間で救出すること、すなわち人命救助のはずだ。

　だが、戦争を行うための組織である自衛隊は人命救助にむいていない。そのことは阪神大震災の際にすでに明らかになっている（別項参照）。その自衛隊は、大挙して「防災訓練」に参加して、いったい何をしようというのか。

　石原都知事は防災訓練への自衛隊の参加の狙いについて、「不法入国の外国人による大略奪が新宿とか池袋で起きるかもしれない。それに対するデモンストレーションとして戦車とか装甲車で街を封鎖する訓練をしてほしい」（『正論』三月号）と語っている。この発言が示すように、今回の「防災訓練」は、自衛隊による首都制圧訓練であり、「犯罪人」視される在日外国人をはじめ都民を自衛隊の指揮の下に統制する治安出動訓練にほかならない。

　ある自衛隊ＯＢは、「治安訓練も防災訓練もやることは同じなんです。…抵抗の少ない防災訓練を隠れ蓑とすれば、自衛隊は普段はできない市街地訓練を堂々と展開できるのです」（「週刊宝石」６ / ２９・７ / ６）と述べている。

　治安出動は都民に銃口を向けるところにその本質があり、今回の訓練は「防災」の隠れ蓑をかぶった治安訓練なのだ。

戦争協力の突破口狙う

　政府は、朝鮮民主主義人民共和国のいわゆる「テポドン」発射や日本海での「不審船」事件を利用し、周辺事態法をはじめとする新ガイドライン（日米軍事協力指針）関連法を強行成立させた。とはいえ、自治体や民間の戦争協力については法的強制力がなく、各地で戦争協力反対の市民運動もあって、戦争国家づくりに対する国民合意は思惑どおりには進んでいない。

　七月末に政府は、自治体の戦争協力マニュアルを「案」の発表から約一年ぶりにまとめた。内容的には従来から言われてきたことと大差はない。

　しかし、この時期に出されたことに意味がある。それは、東京都の総合防災訓練と無関係ではない。政府・防衛庁は「防災訓練」を自治体・民間の戦争協力の突破口として利用しようとしているのだ。

　三宅島周辺で続発している地震のせいもあって、「防災訓練」そのものに反対する国民は少ない。自衛隊を実際に出動させ自治体も巻き込んで実績を積むには、大規模災害はまさに格好の舞台となる。

　すでに防衛庁は、「次期中期防衛力整備計画」で災害対策の専門部隊創設方針を明らかにしている。都市部や原子力・化学特殊災害などの災害対策の装備・部隊編成検討や自治体との連絡体制などのマニュアル策定を始めた（８ / ８読売）。「災害」の名による治安部隊であり、自治体の戦争協力マニュアルと連動するものであることはいうまでもない。

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　石原都知事は、自衛隊の出動が「北朝鮮とか中国に対するある意味での威圧になる」（「ＶＯＩＣＥ」９９年８月号）と、時代錯誤の戦争挑発の意図すら剥きだしにしている。

　「防災」に名を借りた治安出動訓練・ビッグレスキュー東京２０００の実施に反対しよう。