沖縄では、相次いだ基地被害に県民の怒りが広がり、県議会ではじめて「海兵隊削減決議」が全会一致で採択されるなど新たなうねりとなっている。ジュゴンとの共生か、巨大軍事基地建設を許すのかが、いま私たちひとりひとりに問われてきている。
施設庁が三工法を提示
一月十六日に、国と沖縄県、名護市などの地元自治体による「代替施設協議会」の第五回会合が開かれた。ここで防衛施設庁は、新基地建設に向けて
「杭打ち桟橋」
「ポンツーン」
「埋め立て」(別掲)の三工法の概要を説明した。
しかし、どの工法を採用しても、ジュゴンの住む豊かな自然環境を無惨に破壊するのは確実だ。
建設候補地の名護市辺野古沿岸域は、沖縄県が策定した「自然環境の保全に関する指針」の中で、最高ランクの「厳正な保護を図る区域」と規定されている。政府の調査でも、建設候補地にはリュウキュウスガモなどジュゴンの餌となる海草が確認され、ジュゴンもひんぱんに目撃されている。
ジュゴン保護基金委員会の玉城長生委員は「東海岸にはジュゴンが生息する、世界に誇れる自然環境がある。人為的なものを持ち込めば、どんな工法だろうが、どんなに環境に配慮しようが、多大な影響が出る」と指摘している。
国際公約違反は明らか
会合で「住民生活に著しい影響を及ぼさない工法は、どれか」と質問され、防衛庁長官は「部外団体への作業依頼結果を踏まえ、後日の協議会において説明したい」と答えを先送りした。依頼している部外団体とは、「沖縄海洋空間利用技術研究会」(注1)「超大型浮体総合システム研究会」(注2)「日本海洋開発建設協会」(注3)の三つで、それぞれが三工法のひとつに対応している。これらの団体を構成しているのは、大手ゼネコン・鉄鋼・造船などの大企業ばかりだ。
このような団体に依頼しても、自分たちに都合のいいことしか公表しないのは目に見えている。現に、「沖縄海洋空間利用技術研究会」のホームページでは、厚顔にも「環境にやさしい」「ジュゴンへの影響が少ない」などと宣伝している。
しかも、三団体に重複して加盟している企業がほとんどであり、結局、どの工法であろうがたっぷりと儲けが転がり込むことになっている。業界紙では「メガフロートを建造すれば、八十万トンの鋼材需要があると見込まれている」などと皮算用しているのだ。
各大企業からみれば、基地建設もダム建設などのバラマキ公共事業と何ら変わらない。ゼネコン救済のためにジュゴンを絶滅させるわけにはいかない。
三工法については、施設庁幹部でさえ「すべてが良いという工法はない」(1/16沖縄タイムス)と認めざるをえなかった。その内容が具体的になればなるほど「自然環境・生活環境に配慮」(九九年閣議決定)などとはまったくかけ離れたものであることが明らかになる。
日本政府はIUCN総会で「ジュゴン・ノグチゲラ・ヤンバルクイナの生存を保障するために最大限の努力を行う」と大見栄を切り、国際公約した。名護の新基地建設と、この国際公約は決して両立しないのだ。
(注1)沖縄海洋空間利用技術研究会http://www.qip-ok.com/
石川島播磨重工業・鹿島建設・川崎重工業・川崎製鉄・神戸製鋼所・五洋建設・清水建設・新日本製鐵・住友金属・住友重機械・大成建設・東亜建設・東洋建設・日商岩井・日本鋼管・日立造船・三井造船・三菱重工業・レイセオン
なお、同HPには「ジュゴンへの影響」というページもあり、「現在の生育頭数は約十万頭以上」として影響を少なく見せようとしている。ジュゴンの存在を無視できないことの表れだ。
(注2)超大型浮体総合システム研究会
石川島播磨重工業・鹿島建設・川崎製鉄・神戸製鋼所・五洋建設・清水建設・新日本製鐵・住友金属・住友重機械・大成建設・東亜建設・東洋建設・名村造船・日本鋼管・日立造船・三井造船・三菱重工業
(注3)日本海洋開発建設協会
会長の梅田貞夫(鹿島建設社長)は、(社)日本土木工業協会の会長・(社)日本電力建設業協会の会長・(社)土地改良建設協会の会長・(財)日本ダム協会の会長などを兼任。