2025年05月02日 1869号
【1869号主張/トランプ関税の犠牲転嫁NO/対案は軍事費削減 消費税廃止】
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揺らぐグローバル資本
世界185か国・地域に対する関税導入・引き上げを宣言しながら、すぐにその90日間延期を決めるトランプ米大統領の「朝令暮改」に世界経済が揺れている。
関税は輸入品を対象とし、輸入業者に課せられる直接税だ。関税や報復関税でコストが上がれば企業は価格に転嫁する。物価上昇と需要落ち込みが米国だけでなく世界的経済不況を引き起こす危険性を誰もが指摘する。すでに日本では、実質賃金低下と雇用破壊、物価高が労働者・市民を襲っている。この「関税不況」まで加われば、ぎりぎりの状況にある生活は破綻する。
トランプ関税政策の背景には自由貿易体制がある。価格競争に敗れた米国製造業は衰退し、「ラストベルト(錆〈さ〉びついた工業地帯)」の労働者の多くが苦境からの脱出をトランプに託した。彼らに「報いる」ことがトランプ関税の表向きの理由だが、そうはならない。
市民を直撃する関税政策
みずからの利益のために築いた自由貿易体制によって危機を招いたグローバル資本は、今度は自国第一主義≠ニいうナショナリズムによって危機を乗り切ろうとする。だが、グローバル資本本位の経済政策は、ラストベルトの労働者はもちろん他の労働者・市民も決して救うことはない。
関税導入や引き上げは製造業には輸入原材料費の高騰をもたらす。多くの労働者を雇用するサービス産業も危機に陥る。米国も日本も資本は危機乗り切りのためあらゆる分野で一層の合理化、雇用削減を狙う。それは、労働者を直撃し、多くの失業者をつくり出す。
現在、世界の富の半分は上位1%の富裕層が保有する。日本の大企業には600兆円もの巨額の内部留保がある。いま、この富を民衆の手に取り戻す時だ。世界そして日本で大企業・富裕層に課税強化することで雇用維持と生活改善のための財源は十分確保できる。
軍事費減らし生活へ
経済危機やウクライナ戦争の行き詰まりの中、EUは大規模軍拡に舵を切った。これに対し、欧州左翼は輸出主導から内需主導経済への転換、労働者保護と不平等是正、公共投資の拡大などを提案する。
日本国内では、参院選を控え、市民生活破壊の急激な深刻化に、野党のみならず与党内にさえ消費税減税・引き下げ論が浮上する。宮沢洋一・自民党税制調査会長が消費税廃止・法人増税に言及するほどだ。
労働者や中小零細企業へのトランプ関税の犠牲転嫁を許してはならない。闘いの力で、ウクライナ・パレスチナ停戦、恒久平和と緊張緩和を実現し巨大な軍事費を削減する。大企業・富裕層課税を強化する。生み出した財源を医療、福祉、教育、農業、雇用創出など生活改善に回す。これが私たちの対案だ。
(4月20日) |
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