2025年09月12日 1886号

【1887号主張/石破首相が退陣表明/終わっているのは自民党政治だ】

 石破茂首相が辞任する意向を表明した。自民党内で強まり続けた退陣要求に耐え切れず、続投を断念した。もっとも、昨年10月の衆院選に続き7月の参院選でも与党過半数割れの大敗を喫した時点で、石破の命運は尽きていた。主権者からの退場宣告によって石破政権は瓦解したのである。

消費減税拒否に固執

 首相に就任して初の所信表明演説で、石破はエネルギー高騰などの物価高に言及し「物価上昇を上回る賃金上昇を定着させる」と訴えた。辞意表明の会見では、7月分の実質賃金が7か月ぶりのプラス(前年比0・5%増)となったことを成果として語った。

 しかし総務省の家計調査報告(7月分)によると、勤労者世帯の実収入(2人以上の世帯)は前年同月比で実質2・5%減っている。消費支出の内訳をみると、食料が1・8%、教養娯楽が4・1%減った。食費などを切り詰めねば日々の生活が送れない状態が続いているのである。

 それなのに、物価高騰対策として最も効果的な消費税減税に、石破政権は背を向け続けた。人びとの生活よりも「消費税を守り抜く」(森山裕・自民党幹事長)ことが大事だった石破政権が、大型選挙で敗北を重ねたのは必然であった。

予算を大軍拡に

 石破は退任会見で「防衛力の抜本的強化を着実に進めてきた」ことを強調した。こちらは本当である。前任者(岸田文雄前首相)の大軍拡路線を引き継ぎ、対中国をにらんだ戦争準備(沖縄・九州をはじめとする日本全土の軍事要塞化)を実行していった。

 2026年度の軍事費概算要求は8兆8454億円と過去最大を更新した。中身も問題だ。他国領域にミサイルを打ち込むことができる「敵基地攻撃能力」の開発・取得、無人兵器の大量導入、継戦能力を向上させるための弾薬庫整備等々。多用途無人機の調達では、パレスチナ民衆の殺戮(さつりく)で儲けているイスラエルの軍事企業の製品が有力候補の一つに上がっている。

 こうした大軍拡を支える財源とみていたから、石破は消費税の減税に応じなかったのだ。煮え切らないと評されることが多かった石破だが、生活軽視の姿勢は徹底していた。

首を替えてもダメ

 石破の辞任表明を受け、自民党は総裁選レースに入った。刷新ムードを演出し、新しい首相の下で秋の臨時国会や通常国会の予算審議を乗り切ろうというわけだ。だが、看板の取り換えでは何一つ解決しないことに人びとは気づいている。

 自公政権など既存の政治に対する批判が極右・右派勢力に吸い取られるようなことがあってはならない。軍拡と新自由主義の路線と決別し、市民の命と暮らしを守る政策への転換を迫るときだ。

  (9月8日)
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