2021年02月12日 1661号

【辺野古に自衛隊常駐で極秘合意/日本版海兵隊の出撃拠点に/日米軍事一体化のあらわれ】

 陸上自衛隊の「水陸機動団」を、沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブに常駐させ、新基地を米海兵隊と共同使用する日米合意の存在が明らかになった。菅政権はこれを全否定し、全国紙やテレビも黙殺している。情報をひた隠しにした上で軍備を進める、いつもの手口だ。

米軍と共同使用

 陸上自衛隊と米海兵隊が、在日米軍海兵隊基地のキャンプ・シュワブに、陸上自衛隊の「水陸機動団」を常駐させることで、2015年に極秘合意していた。沖縄タイムスと共同通信の合同取材に対し、日米両政府関係者が証言した。

 辺野古岬一帯は米軍普天間飛行場の「移設先」とされ、シュワブ沿岸部の埋め立て工事が行われている。この新基地を米海兵隊と陸自水陸機動団が共同使用する。まさに日米の軍事一体化を象徴する最新鋭の出撃拠点だ。「代替施設」どころではない。

 沖縄タイムスの報道によると、陸自中枢の陸上幕僚監部がキャンプ・シュワブでの現地調査をひそかに開始したのは2012年。同じ頃、まだ構想の段階だった水陸機動団の一連隊を沖縄に置くことも決めた。

 辺野古常駐が具体化したのは2015年。当時の岩田清文陸幕長が在日米海兵隊のニコルソン司令官(在沖米四軍調整官)と合意した。合意後、両者が調整し陸自施設の計画図案や給排水計画を作成し、関係先に提示した。計画には陸自のほかに防衛省内局や沖縄防衛局も関与した。

 常駐案は米国政府も了承した上で合意されている。米オバマ政権の元高官によれば「日米両政府間の共通理解」だという(1/29沖縄タイムス)。一時凍結扱いになっているのは日本政府の事情である。陸自常駐が表面化すれば沖縄の反発を抑えられなくなり、新基地建設自体が危うくなることを恐れたのだ。
 逆に言うと、新基地完成の目途が立てば、いつでも解凍し動かせる状態にあるということである。

陸自にとっては悲願

 陸上自衛隊は辺野古新基地を水陸機動団に使わせる構想をずっと抱いていた。「殴り込み部隊」と呼ばれる米海兵隊をモデルに創設されたこの部隊は、島嶼部の奪還などの水陸両用作戦を主任務とする。垂直離着陸輸送機オスプレイや水陸両用車AAV7などの装備も“お手本”と同じだ。

 水陸機動団は今、長崎に2つの連隊がある。2023年度に3つ目を九州に置き、将来はいずれかの連隊を辺野古に移転させる計画だ。そのほうが南西諸島への出動を想定した部隊運用や米軍との共同作戦の遂行に好都合だからだ。

 新基地には1800mの滑走路があり、オスプレイが最大搭載で離発着可能だ。係船機能付きの護岸もできる。海自の輸送艦が接岸し、水陸両用車の積み下ろしが可能ということだ。シュワブ内には上陸訓練用の砂浜もある。何より米海兵隊が一緒にいる。「日本版海兵隊」にとっては申し分のない環境といえよう。

 現在、沖縄県金武(きん)町の米軍ブルービーチ訓練場で陸海自衛隊、米海兵隊や海軍が参加した日米共同訓練が行われており(2月6日まで)、水陸機動団もこれに加わっている。辺野古配備に向けた地ならしであることは明らかだろう。

全国紙は黙殺

 「従来より代替施設における恒常的な共同使用は考えていなかった。これからも変更はない」。菅義偉首相は1月27日の参院予算委員会で陸自部隊の辺野古常駐、米軍との共同使用合意を全否定した。

 だが、首相のこうした説明を額面どおりに受け取る沖縄県民はいない。日本政府にはオスプレイの沖縄配備計画をしらばくれてきた「前科」があるからだ(別記事参照)。

 新基地建設に反対する「オール沖縄会議」の稲嶺進共同代表(前名護市長)は「米軍再編が進められる中、隠すように自衛隊使用という伏線が敷かれていた。事実なら恐ろしく、許されない」と憤る。「本土防衛のために沖縄を『捨て石』にしたような戦前の軍隊の体質が、今も防衛省の中に生きている感じがする」

 極秘合意の存在をスクープした沖縄タイムスも、沖縄戦の歴史と重ね合わせ「軍事要塞化を拒否する」(1/26社説)と訴えた。もちろん沖縄だけの問題ではない。日米「海兵隊」の共同作戦は安保法制の具体化であり、日本を再び侵略国家にするものだ。

 それなのに、「本土メディア」の反応は鈍い。全国紙や東京発のニュース番組は後追い報道すらせず、だんまりを決め込んでいる。完全黙殺によって世間に問題を認知させないつもりなのだ。政府の意を汲み、軍事情報は徹底的に隠す。この情報統制は「戦時中」を思わせる。    (M)

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