2021年05月07・14日 1673号

【区域外避難者の住宅追い出し 許せない福島県の攻撃】

 福島原発事故から10年を経過したが、県外避難者は2万8372人とされている(3月31日現在。復興庁データから福島県発表)。にもかかわらず、避難者への経済的支援策はすべて打ち切られた。このため、災害救助法に基づき2017年3月まで住宅の無償提供を受け、その後も事情があって継続して住み続けている区域外避難者にも、「不法占拠状態」として明け渡し攻撃がかけられている。

 東京の国家公務員宿舎で暮らす避難者4世帯に福島県は昨年3月、明け渡しの訴訟を起こした。うち2世帯は、意見表明を封じる福島での審理に抗議して住居のある東京地裁への移送を申し立てたが却下。現在福島地裁から第1回口頭弁論の日取りが打診されている。当事者は「福島までの移動はコロナ禍で不安は募るし費用も大変。裁判で直接訴えたいことはたくさんあるのに、その機会を奪おうとするのは不公平だ」と話す。

 2世帯を支援するため「原発避難者の住宅追い出しを許さない会」も結成された。小川正明同会事務局長は「住居の代替も用意せず強制追い出しを図るのは明らかな国際法違反だ。福島現地の皆さんの協力も得ながら、社会的にこの問題を広げていく」と訴える。

憤る当事者

 県はまた、東京・埼玉の国家公務員宿舎に住む20数世帯の区域外避難者に、1月中の退去と応じない場合の提訴方針を通知。福島在住の親族を調べ上げて戸別訪問し、明け渡しと損害賠償金の支払いを催促した。当事者は「本人の了解もなく勝手に親族の住所を調べて脅して回ったのは家族の分断だ」「『調査』『協力依頼』のための訪問とは表向きで、実際には高齢の父母に退去やお金の支払いを促した。人道的にも許されない」と怒りでいっぱいだ。弁護団は、県の提訴の動きがあればいつでも対抗できるよう準備を進めている。

 区域外避難者を支援する柳原敏夫弁護士に聞いた。(4月25日、まとめは編集部)

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