2022年06月17日 1727号

【2022ZENKOスピーキングツアー/沖縄・南西諸島を戦場にするな】

 2022ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)スピーキング集会(5/28〜6/5)は、全国8会場で開催。オンラインを含めのべ約800人が参加した。沖縄・南西諸島の最前線で闘う8人が発信。国際的な反戦運動と結んで東アジアの平和の展望を作り出す取り組みとなった。(4〜5面に関連記事

広島/土地規制法全面施行との闘いを/沖縄ドローンプロジェクト 奥間政則さん

 広島集会(6/4)のゲストスピーカーは沖縄ドローンプロジェクトの奥間政則さん。一級土木施工管理技士として辺野古新基地建設の問題点を暴いてきた。

 講演では、沖縄防衛局の耐震設計の杜撰(ずさん)さを指摘した。沖縄防衛局が設計に使った過去の地震はマグニチュード(M)5以下。2010年に発生したM7・2の地震を無視したのだ。特に今年3月、琉球弧(南西諸島)周辺で今後M8レベルの地震発生を国の調査委員会が示した以上、改めて設計をやり直すべきだと指摘した。

 奥間さんは「県は不承認理由に追加し、埋め立て承認そのものを取り消すべきだ」と主張する。会場からの質問に答え、「軟弱地盤や活断層の問題もあり、辺野古新基地は決して完成することはない」と断言した。

 ドローンによる監視活動は政府のごまかしを暴く大きな力になっている。奥間さんは鹿児島県馬毛島(まげしま)から沖縄県与那国島で進行する軍事要塞の実態をドローン撮影の写真で示した。

 ところが監視活動の弾圧を狙った土地規制法が6月1日から一部施行、9月1日からは全面施行される。奥間さんは規制対象の基地から1`bの範囲を地図で示した。ドローン撮影もドローン規制法(300b)以上の制限が加わる恐れがあると警戒する。

 奥間さんは兵庫県や滋賀県での自衛隊基地周辺の規制範囲も図示し、「全国各地で学習会をしてほしい」と訴えた。騒音被害や汚染被害など基地を市民が監視し続けることが米軍や政府のごまかしを許さない闘いでもある。土地規制法はこの市民運動を敵視、弾圧するものだと強調した。


兵庫/動物に代わり自然破壊に声上げる/チョウ類研究者 宮城秋乃さん

 兵庫集会(6/3)では、沖縄島北部やんばるの自然破壊に声を上げるチョウ類研究者・宮城秋乃さんが次のように報告し、参加者に共感と連帯を広げた。

 ―2016年12月、北部訓練場の過半が返還され、たった1年で「支障除去」が完了したと発表があった。こんな短期間で広大な森林地帯の汚染除去を完了できるはずがないと考え、米軍廃棄物の調査を始めた。現地には、約3千発の弾丸等や野戦食の袋、ドラム缶など廃棄物が未回収のまま大量に残り汚染し続けている。

 19年10月までは、通報したら名護署の警察官が現場へ来て弾丸等の確認・回収を行っていたが、以降は来なくなったので、米軍廃棄物を北部訓練場のメインゲート前に置く活動を始めた。

 同年7月、沖縄島北部の“やんばるの森”が、世界自然遺産に登録された。返還地を含む地域が世界自然遺産に登録されたことで、観光等で利益を得る人たちが生まれる。また「米軍基地があったおかげで自然が守られた」という米軍のプロパガンダに利用される。

 昨年12月、那覇地方検察庁が「北部訓練場ゲート前に廃棄物を置き米軍車両や軍関係者らの通行を妨げた」として、威力業務妨害と道路交通法違反で、私を在宅起訴した。今秋からは公開の裁判に入る。ぜひ支援をお願いしたい。

 米軍基地と自然保護は両立しないという事実を伝え、“やんばるの森”を守りたい。そして、再び沖縄県内の森林性のチョウの生態の研究に専念したい。―




京都/子連れでも参加できる行動めざす/てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会共同代表/楚南有香子さん

 6月1日、「てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会」共同代表の楚南有香子さんに沖縄県宮古島で進む軍事要塞化について、お話をうかがいました。

 2016年、ミサイル基地計画が発表されたとき、自衛隊配備反対の住民集会に子連れで参加したのは、楚南さんと石嶺香織さんの2家族だけ。「でも不安に思っている人はたくさんいるのでは」と会を結成し、「従来の男性中心のやり方でなく、当たり前に子どもがいる状況で、子連れでも参加しやすいよう工夫しながら学び、行動してきた」とのことです。

 ミサイル部隊800名の配備やより高性能なミサイル配備など「専守防衛をこえた戦争をしかけられる軍隊への変容だ」と楚南さん。ミサイル配備に伴う住民が負うリスクについて住民説明会を要求していますが、いまだ行われてません。

 「この6月一部施行の土地規制法は住民監視規制法。住民の当たり前の声、反戦運動や平和運動が制圧の対象となる。しかし、政府がいやがる民主主義や人権を守る行動をどんどんやっていきたい」と強調。最後に楚南さんのお父さんが「平和な時に平和を叫ばないと、いざ危機が近づいたときに人は平和の言葉に耳を傾けない」といつも言っている言葉を紹介し、「まだかろうじて平和な今、叫び続けたい」と語りました。

 子どもたちが安心してくらし続けられるよう基地のない平和な島をめざして声を上げ続ける楚南さんや沖縄の人びとに連帯していきたいと心新たにしました。

(ZENKO京都・石田隆子)


北海道/周到な準備で急速に進む軍事要塞化/戦争のための自衛隊配備に反対する奄美ネット代表/城村典文さん

 北海道集会(6/2)では、戦争のための自衛隊配備に反対する奄美ネット代表の城村(じょうむら)典文さんの講演を聴いた。

 奄美駐屯地(地対空ミサイルなど)はゴルフ場の一部を地元建設業者から高額で買い取り2019年に開設した。20年には公道で小銃携行の行軍訓練が行われた。「来ない」と聞いていた米軍との共同訓練が始まった。同時開設の瀬戸内駐屯地(地対艦ミサイル)では、歓迎式典に幼稚園児が動員された。16年からはオスプレイが頻繁に来る。19年からはC130輸送機も奄美を飛ぶ。

 城村さんらは、低空飛行について県に情報開示を求め続け、抗議文書の成果もあり回数は減った。公道での行軍訓練もなくなった。一方で住民も慣れてきて低空飛行の報告は少なくなっている。シール投票では8割が軍事基地化に反対し、戦争のための自衛隊と気づいているようだが、奄美市議会で反対する勢力は25議席中3議席と、大きな声にはなっていない。

 10年の防衛大綱改定に先立ち、08年から災害救助訓練の名目で自衛隊が来た。09年の世界遺産登録は基地設置と引き換えだった。水面下で周到に準備、表面化後は急速に事を進める。政府の戦争政策を転換させるのが肝心だが、そのためにも行政への情報開示請求・抗議と議会勢力を変える運動、そして広く周知することは欠かせない。

 ZENKO北海道からは「人に優しい相談事業所の開所と民主的地域拠点作りへの展望」の取り組み報告等が行われた。

(ZENKO北海道・砂川一郎)

 
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